ぼっちザうぉっちゃー

少女は卒業しないのぼっちザうぉっちゃーのネタバレレビュー・内容・結末

少女は卒業しない(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

青春群像劇という主題と「原作:朝井リョウ」という触れ込みだけで鑑賞。
結果、その並びに対する妄信度がただ上昇した。やっぱ好っきゃねん。

そしてパンフレットの質が、ここ最近買ったなかでダントツ良かったのもポイント高い。
遅い上映回で売店が閉まるため、鑑賞前に買ったのだけれど、期待を込めたジャケ買いの英断に、自分でナイスプレイ!と言いたい。

まず、学校の立地が良かった。
山に囲まれながら、前に大きな川が流れていることで、田舎臭のなかに絶妙な清涼感が吹き抜けており、とても気持ちのいい見栄えになっていた。
そして主な役者陣の顔触れが、軒並み揃って見たことがない方たちだったので、役者としてではなく、限りなくまっさらな状態の「高校生」として観ることができたのも僥倖だった。
(後に確認すると、尽く私が観たいと思いながら観ていなかった作品の出演者ばかりだったので震えた。)

ストーリーとしては、シーンを重ねるごとに少しづつ、それぞれの少女たちが銘々に抱えるジレンマと本懐が垣間見えてくるのが面白くて、スローペースながらもしっかりと惹き付けられた。
高校生活の端々をかじりながら卒業というクライマックスに向かうのではなく、卒業の2日前から物語が始まるという短期決戦な構成の妙が巧く効いているなと感じた。
また個人的に、卒業生として最初のコロナ直撃世代なこともあり、高校最後の思い出が卒業式の予行なので、突然3年前にタイムスリップしたかのような感覚に陥ったりした。


どうしても伝えられない想いを秘める少女たち。そのなかに一人だけ、全く違う形でやはり「どうしても伝えられない」少女がいる。
卒業とは、自分の意志とは関係なく誰しもに訪れるものだ。
しかし卒業が、青春の「修了」を意味するのならば、青春そのただなかに、やり残しを抱え、思い残しを募らせたままの彼女らは、青春落第者。卒業はできない。
そして青春の片割れを亡くし、いまだ季節の反対側に置き去りの彼女は、少女は、卒業しない。

けれど、残酷に、無情に、訪れる終わりを前にして、少女が卒業生代表として答辞を読む意味。少女たちとともに無くなる校舎(かつての世界のすべて)を想う意味。各々がそれらに触れることで、ゆっくりと別れの門に立ち始める。
まだ完全に割り切れたわけではない。すっきりと新しい世界に踏み出せるわけでもない。「しない」という抵抗はこの先も、蟠るだろう。

けれど世界のすべてだったそこにはもう、戻ることはない。
そして確かにその胸には、花が咲き誇っている。

卒業おめでとう。