ゆかちん

あの頃輝いていたけれどのゆかちんのレビュー・感想・評価

あの頃輝いていたけれど(2022年製作の映画)
2.8
ネトフリ映画。
ありがちかな話ではあるけど、答えをハッキリさせず鑑賞者に委ねているところや、多くを語らずともそれぞれの心情を推しはかれるようになっているのは良かった。
現実の厳しさや辛さもあるけど、とても優しくて、じんわりと良かった。




かつて大人気の男性アイドルグループのスターだったヴィンス(エド・スクレイン)だが、今はお金もなく落ちぶれたミュージシャン。
ある日、街で作曲しながら演奏していると、そっと近寄ってヴィンスの曲に合わせてベンチを叩いてリズムを刻む自閉症の青年スティービー(レオ・ロング)が現れる。そんな2人のジャムセッションはSNSで話題になる。
ヴィンスはスティービーの才能に惚れ、バンドを組もうと彼の通う音楽療法セラピーに行って誘うがーーー。



ヴィンス、スティービー、スティービーの母、キャラクターそれぞれの出発を描いていてとても良いな〜と思った。

ヴィンスがかつてアイドルだったときとその後の事情とかも間に挟まれていて。
弟の死、母との関係など、ずっと後悔や心の痛みを抱えていた。
そうやって長く迷走していたけど、スティービーたちに出逢い、「自分が本当に輝ける人生とは」という答えを出したようで素敵だった。

歳を重ねた夢追い人の不甲斐ない雰囲気を、デッドプール1のヴィラン:フランシスを演じたエド・スクレインが。
あ、フランシスって呼んだらあかんねやった笑。整っているけど割と怖そうな顔立ちだから、最初の情けない雰囲気が余計に大丈夫かなぁって思えた笑。


スティービー役のレオ・ロングは、現実でも役の通り自閉症のドラマーとか。そりゃドラムうまいわけやわ。
スティービーがヴィンスに惹かれたのは、何か彼に心の傷や現状から打破したい何かを感じ取ったからなのかな。
そして、スティービーも夢の音楽学校に通うために現状打破したかったのかも。
ヴィンスを想い、自分からライブハウスに売り込みに行き出す姿はカッコ良かった!
また、素晴らしいダンサーだった母が自分のせいでダンスを辞めて自分の世話をしてると思って引っかかっていたし。
自らの意思で独り立ちするというのは凄く良いこと。それをヴィンスとの出会いで行動に移せたのは良かった。
最後、きっと彼は音楽学校に行ったんだろうと思う。ヴィンスと交流しながら。


スティービー母アンバー。日本人ぽい顔立ちだなーと思ってたら、日本生まれのイギリス育ちのハーフの人なんやね。
とても過保護な母。でも仕方ないよな〜。
ヴィンスがスティービー利用しようとしてるんちゃうかて思っても仕方ないというか笑。
でも、スティービーの成長を感じて、独り立ちを応援して、自分もダンスを再開して自分の人生を歩き出すように見えたのもとても良かった。


ヴィンスのかつてのアイドルグループの仲間で唯一?成功しているオースティン。
彼も一人勝ちしてみんなを忘れているわけではなく、ヴィンスのことを気にかけてコソッとライブを観にこようとしてたり、自分のツアーに同行させようとしたりした。
良いやつだな。
でも、輝いている彼も、結局当時から引っ張ってるマネージャー?プロモーター?の言いなりみたいで。
売れるかもしれないけど、彼が本当にやりたいことをしているかはわからない。

ヴィンスが最後、契約するかどうかペンを握ったとき、彼が観たオースティンの様子がそれを物語っていた。
だから、ヴィンスは契約してないのではないかなー。
きっと、ヴィンスは音楽療法セラピーの仕事について、自分の音楽をしながら、そういう活動をして行くのでは。

かつて、死に近づく弟の誕生日に逢いにいくのをとるか、アイドルグループの活動をとるか、という選択を迫られたヴィンス。
その時はグループ活動を取って、弟は会えないまま亡くなってしまった。それが彼のトラウマに。
今、また二度とないチャンスが目の前に。そこで、自分のチャンスとスティービー、ここでまた同じ選択を迫られるという構造。
そして今回出した答えは…というのがグッと。

夢は叶えられないかもしれないけど、
でも、それは本当に望んだ夢なのか。
自分が本当に輝ける人生とは何か。
…こういうところに落ち着いた気がした。

たどり着いた最良の地。


最後のストリートライブめちゃくちゃ良かった。
音楽療法セラピーの仲間も参加して、その場にいた人たちも寄ってきて、感動。。
スティービー母にダンスしてほしかった笑。


イギリスのロンドンの街の雰囲気がとても良きでした。

彼らの物語はここから始まる…という終わり方なのがとても良い余韻を残したなぁと思った。
ゆかちん

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