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パリタクシーのNのレビュー・感想・評価

パリタクシー(2022年製作の映画)
3.9

仕事が巻いた平日の昼下がり。
主人公のマドレーヌのように
素敵に歳を重ねられた方々の
仲間に入って観る『パリタクシー』。

4人組の仲良しおばあちゃんや
ご年配の夫婦を横目に、この方々は
どんな人生を歩んできたんだろう…
なんて思いながら鑑賞。
映画館ってこういう良さがあるよね。

*

男性の許可なしでは生活できないほど、
女性の自由や権利が全くない時代で
生きてきたマドレーヌ。

そんななか逞しく生きてこれたのは
あの忘れられない”燃えるような恋”が
あったからなんだろうな…

たった1分や1秒でも、
忘れられない幸せだった瞬間って
誰しもあるよね。光の眩しさや眼差し、
肌を撫でる風、交わした言葉…
歳を重ねれば重ねるほど
忘れてしまうことの方が多くなるけど、
些細なことも容易に思い出せる、
大切な人との幸せなひととき。

けどマドレーヌは、そんな過去の幸せに
“しがみついている”訳ではなかった。

忘れられない恋や家族との別れ…
どんな出来事も今の自分を
創りあげた 無くてならない過去。
大切な思い出はお守りに、
辛い思い出は“忘れる”のではなく
一緒に”運んで”いく。

あの日過ごした街はどんどん姿を変え、
建物の色や形も曖昧になっていくけど、
確かにそこに私は居た。

タクシーで巡る”記憶の旅”は
そんな覚悟や自信で満ちているようで
清々しかった。私もいつかそうなりたいな。
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