字幕版を鑑賞。
老人の昔話は、脈絡が無く独りよがりでこちらの都合に関係なく延々と続いたりするので、時にはウンザリさせられる事もある。
生活に追われるタクシー運転手シャルルに、乗客の老女マドレーヌが道すがら思い出話を語り始めた時点では、そんな体験が頭をよぎりお座なりに相槌を打つシャルルに同情すら覚える。
タクシー運転手とは不思議な職業で、普通なら決して出逢わない立場の者同士が密室で二人きり(とも限らないが)、一期一会の道行を過ごす。ただ、ロバート・マッコールの様に瞬時に他人の人生に入り込んでしまうのは実際難しく、シャルルもパリ市内を毎年地球3周分も走り回る繰り返しの日々に感性が磨耗して何の喜びもない。
92歳と46歳。祖母と孫ほど歳の離れたこの二人が、それでもマドレーヌの人生を総括する道行に渋々付き合う内にシャルルも本来の善良さと優しさを取り戻し、たった半日の素晴らしい出逢いの喜びでパリの街も美しく輝き出す。
映画のお伽噺。でも自分の様な頑なな人間にはこういうお伽噺が染み入る。