木蘭

パリタクシーの木蘭のレビュー・感想・評価

パリタクシー(2022年製作の映画)
3.8
 寄り道しつつパリを横断するロードムービー仕立てで描かれる、旅人に親切にしたら恩返しされた...という"おとぎ話"。

 タクシーの中の会話劇かと思ったら、お客様の老婦人の回想シーンが入ったりと密室劇では無い。
 配給会社がひた隠しにしている物語の背骨は、1968年の「五月革命」以前の古くて封建的な男性社会だったフランスと、現代のリベラルなフランスとの対比。そして何より旧態依然とした社会の抑圧と戦った女性の話。

 とにかく画像や音楽が堂々として美しく、主演二人が素晴らしいので素直に感動してしまうのだが、物語としては粗や突っ込みどころは在るんだけどねぇ。おとぎ話って事で。

 それと散々、伴侶(PACSの相手)の目が美しい...とか、娘は彼女譲りの目で...と主人公が自慢しているので、とにかく目が大きい女優達を配役したんだろうな...と想像出来て笑っちゃった。

 それはそうと、妻が米国兵との(明らかに騙されて遊ばれた)思い出と一粒種を後生大事にしていて、自分の子供を産んでくれない...と成れば、心も折れるよなぁ...とヒロインのDV夫に同情したくも成る。正当化は出来ないにしても。
 当時の時代や社会の中で育って、さして教養も余裕も無い男の表現の発露だと思うと、非常にやりきれないし哀れな話ではある。
 しかし「愛があれば殺していたわ。」は、グッとくるセリフだなぁ。
木蘭

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