えむ

パリタクシーのえむのレビュー・感想・評価

パリタクシー(2022年製作の映画)
4.3
公開時に評判が良いのは知っていて、み観たいとは思っていたんだけど、想像していた何倍も素敵で!暖かくて、優しくて、良い空気の流れる映画でした。

映画ってストーリーそのものやキャスト、音楽、画づくり、色んなファクターがあると思うけれど、とにかくそこに流れる空気やその匂いみたいものが大好きな作品って、そんなにたくさんは出会えないんですよね。

その点これはもう、そこかしこに流れる全てが素敵で、パリの街並みと風景、たわいのない会話、ゆったりと進む車内での関係の変化、そこで明かされる驚愕の真実、色々なものがあるなかで、音楽一つとっても不思議に全てが自分の好み、いつまでもそこに浸っていたいような時間が流れていきました。

私の大好きなドライビングミスデイジーとかもこの系統だと思うんだけど、最初は渋々と言ったところから始まった2人の空気がどんどんどんどん柔らかくなって、そこに何か密度、繋がりのようなものが出来て温度が帯びてくる、タクシーを降りる頃になったら、もうこの話が終わってしまう、この2人のこの空気が終わってしまうのがとても寂しい気持ちにさせられました。

画面を通して寄り添うこちらですらそうなのだから、描かれる当人たちなら尚更でしょう。

マドレーヌの過去、体験の辛さっていうのはいつの時代も変わらないし、女性がとても苦しんできた、それって今以上にひどい時代があったんですよね。

その中でここまで頑張って生きてきた彼女、それだけでとても強くエールを送りたくなる。

そして途中からは人生の最期を心穏やかに迎えてほしい、誰かに見守られて迎えてほしいと、そんな気持ちがむくむくと湧いていました。

お金に困っていて、少しでもお金が欲しかったはずのシャルルが、敢えて次の約束をするためにこの1日がかりのドライブの料金を一切取らない、また次に会う時に、と言う。

きっともうその時には、彼はお金以上に大切なものをそこで手にすることができたのだろうし、彼女のことを大好きになっていたと思う。

ほんと大好きになるよマドレーヌ。
あんな人生の先輩に出逢いたいなとおもわせられる、とても素敵な作品でした。

WOWOWあたりで放映してくれる機会があったら、録画して手元に残したいな。
えむ

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