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パリタクシーのPoMooNのレビュー・感想・評価

パリタクシー(2022年製作の映画)
3.7
フランス映画はあまり見ないから俳優さんについて殆ど知らないが、評価が高かったので視聴。
ハートウォーミングで明日に期待したくなる作品。

愛する家族はいるが、生活にも仕事にも自分の人生にもどん詰まりを感じ、常に苛立ちを抱えているタクシー運転手シャルル。偶然の依頼で乗せたおしゃべりなマダム・マドレーヌを終焉の場所の施設に送るまでの間、彼女が生きたパリの街並みを周る。

運転中も常に苛立つシャルルに
『ひとつの怒りで、ひとつ老い、ひとつの笑顔で、ひとつ若返る』
と伝え、それでも「怒り、私にも覚えがあるわ」と、品よく穏やかな人生を送ってきた印象の彼女の、実は壮絶人生を語り始める。場所を周る度に彼女の過去の映像が入り込む。

過去は壮絶なのに、車窓から流れる綺麗なパリの風景と軽やかな語りの対比がどこか清々しい。それだけでなく、’50年代は今とは全然社会が違う、概念が違う、と言いながら、それでも芯の強さで自分の人生を諦めなかった語りはシャルルへのカンフル剤になったようだ。

自然にシャルルは自分の環境、過重労働、妻・家族の事を語り出す。そして祖母と孫ほどの年齢差、乗客と運転手を超えて二人の心が通い合っていく。

最後の手紙に添えられていたプレゼントはベタで途中から予想がつくが、善意を信じたい安心材料のひとつと捉えれば悪く無い結末。
No.1288
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