やっぱり監督の自叙伝的映画は本人が思っているほど面白くないと思いました。
主人公のエリス・フレンチは、ゲイであることから母親に勘当され、16歳からホームレスとして生活してきた25歳の青年。将来になんの展望もないままホームレスとして死ぬくらいなら、軍隊に入ってヒーローとして死んだ方がマシ、とUSマリーンのブートキャンプに参加する。
ストーリーはフレンチがゲイであることから差別されいじめを受け、それでも頑張ってブートキャンプを卒業し、立派な「プライベート」になるまでを描いているのですが、なんかピンときませんでした。
フレンチのお母さんはすごい冷たい人なんだけど、本当にゲイって言うだけで勘当されたの?この話は監督・脚本のエレガンス・ブラットンと言う人の自伝的映画なのですが、"Inspired by a True Story" と最初に出るので、創作の部分はどこなんだろって思う。
で、マリーンではゲイであることから差別されるって話なんだけど、なんかこの辺がぼわ~っとしている。いじめに遭うのも可哀想だと思えない。だってこういう組織って必ずいじめられる子はいる。ドリル・サージェントがフレンチにキツイってのも、ゲイに対する差別心なのか良くわからない。いじめを容認するわけではないが、ある程度過酷な状況に耐えられなかったら、戦争行ってから困るじゃん。映画の中でも「ブートキャンプはお前らをブレイクするためのものだ」って言ってるし。
どうも解説を読むと、このお話は2005年が背景で、この頃ゲイは表向きはミリタリーに入れないことになってたらしい。入るときに「お前はゲイか」って訊かれて「ノー!サー!」って言わされる。なんだけど、ゲイは意外と多くて、その人達を入れなかったら軍隊が成り立たないから「Don't Ask, Don't Tell(訊かない、言わない)」ってのが普通だったらしい。
けどフレンチがゲイってバレたのは、シャワールームで勃起しちゃったから。・・・このエピソードでこの主人公すごいイヤ!って思った。性欲コントロールできないの?!ってか、一緒にシャワー浴びているだけで性的になる人、そりゃあ一緒に訓練している男の子たちイヤだよね。
ゲイの方が少数派に描かれているけど、もしゲイの方が大手を振っていたらどうなる?って思った。ストレートの男の子たちが、シャワー浴びるの恐怖に感じるでしょ。
「Don't Ask, Don't Tell」ってのも、そんな悪いこととも思えない。だいたい、ゲイであるかそうでないかなんて、プライベートな性的なことなんだから、別に言わなくて良い。「訊かない、言わない」って言うのはつまり差別がないってことなのでは?
映画として何がポイントなのか良くわからない。ゲイで黒人で差別されていたが、ブートキャンプで自分を証明したからみんなに認められたって話なんだろうけど、どの辺が差別で、どの辺から認められたのかとかが良くわからない。
でお母さんも、ブートキャンプを本当に卒業したフレンチを誇りに思って卒業式に来るんだけど、フレンチがゲイであることに変わりはないと知ると、急に怒り出す。
これ本当にピンと来ない。ここを深堀りして描いて欲しい。95分なんだから、まだ30分くらい延長しても行けたでしょ?ここがちゃんと描かれていないってのは、なんかゲイであること以外にも色々あったから勘当されたんじゃないかと言う気がしてならない。
一人の青年の成長物語としてはドラマがなさすぎるし、ゲイで黒人だから高評価されているとしか思えない。こういう映画を評価しないと「人種差別」「LGBTQ差別」ってすぐ言われる時代だから。