コマミー

インスペクション ここで生きるのコマミーのレビュー・感想・評価

4.2
【壁は厚い】



これはまた見応えのある"LGBTQ+"作品に出会った。だが、常に"哀しみ"が伴う物語だった。


多様溢れる社会への理解は表面上は進んでいるのかもしれない。だが、"内面"はその人達によっては"暗闇"が続く事もあると言う事も忘れてはいけない。中には未だにその人達を"敬遠"したり、その人を"痛めつけたり"する。LGBTQ+への理解が薄く、"敵視"したり、"ゴミ同然"に扱う人がまだ後を経たないのだ。本作の主人公"フレンチ"のように、"ゲイ"である事を明かしたら"家族に捨てられ"、若くして居場所が無くなる人も多い。

"性への理解という名の壁はとても厚い"という事だ。

本作はその事を、"監督の実体験"を基にそれを伝えた作品という事になる。しかもここにおける監督にあたる主人公フレンチは、あえて生きていく為の糧を稼ぐ為に、ゲイへの差別が入り巻く"海兵隊"に入隊し、数々の"嘲笑や暴行"を受けながらも成長と共に"差別に抗っていく"のである。
途中のフレンチに対する差別主義な同朋や教官からの壮絶ないじめは見てられなかったが、フレンチの他にも隊列にいる中で苦悩している人がいて、フレンチがそれを包み込もうとするほど強くなっていく様が尊くて涙が出そうになった。
そしてフレンチの"母"との対面シーンは胸が締め付けられた。「ムーンライト」に出てきた
シャロンの母親並にキツい人物であった。
フレンチが母親とうまくいく事で本作のゴールのように感じたのだが…この2人の描写もこの差別を学ぶ上で大切だとわかる。

上映館がなかなかにも少なくて観に行こうか迷ったのだが、私は本作は無理してまでも観にいく価値があったと感じた。
フレンチを演じた"ジェレミー・ポープ"…素晴らしい演技であった。その母を演じた"ガブリエル・ユニオン"も絶妙な威圧さで、息子との関係の難しさを表現した。教官を演じた"ボギーム・ウッドバイン"も凄かった。

LGBTQ+への理解はまだ険しい。
だが、そんな困難にも負けず、監督も含め、皆強く生きて、いつか訪れる平和な世界がその人達に訪れてほしい。
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