コーディー

インスペクション ここで生きるのコーディーのレビュー・感想・評価

3.8
同性愛者という理由で母親から縁を切られたフレンチが不安定なホームレス生活や彷徨う自己を克服しようと海兵隊に入隊する…
当然その軍隊でも容赦ない差別に遭いながら、それでも過酷な訓練や何よりここに属しているという意識が自分を貫き、偏見に抗う自尊心を鍛えていく。

イラク戦争が長期化する2005年アメリカ。〝男らしさ〟の連帯で士気を高める軍の中でゲイであるフレンチがどう影響するのか…
同期や教官など様々な関係性を通して描かれる排除と容認、そして埋まらぬ母との確執。そんな過酷な環境の中でも懸命にアイデンティティを見出す様子、細やかな共鳴に心を打たれた。

監督の実体験を基にした作品らしいけど、重く辛い内容にも関わらず社会や母親への批判的な視点はそんなに感じなかったし、むしろ希望を見出そうとする強い信念が美しい映像などからも伝わってきた。
とまあ、突出した何かはないけど主演のジェレミー・ホープの抑えた演技や音楽に至るまでとても上質な味わいでした。

同性愛者だと軍内の誰もが知っていても本人が公言しない限り容認される〝聞くな 言うな〟通称DADT法。
オバマ政権で撤廃されたらしいけど、なんか都合の良い規定だなって思ったし、軍人にはなれてもマイノリティへの理解は何も深まらない。
そんな歪さをやんわり照らす終盤の展開も良かったな。