CINEMASA

インスペクション ここで生きるのCINEMASAのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

【ゲイである事で母から拒絶され、16歳から10年間もホームレス生活送ってきた黒人青年のフレンチが、居場所を求めて海兵隊入隊を志願する。新人訓練で、鬼教官達からの猛烈なるしごきを耐え抜くフレンチだが、ある日、ゲイである事が周囲にバレてしまい、共感や仲間達から壮絶な差別を受けるようになってしまう……】というスジ。

 現在、アメリカ映画界で、最も注目されていると言って良い映画会社A24の作品だ。

 監督は、本作がデビュー作となるエレガンス・ブラットン。彼の実体験に基づく作品であるとのこと。

 なんかね、言いたい事は幾つかありますよ。「教官に恋心……っていうか、性欲まっしぐらなだけじゃん、それ!!」とか。「シャワールームで妄想して勃起して、それでゲイバレってどーなのよ? 場所、わきまえなさいわ!!」とか。2箇所で挿入される妄想シークエンスも、やっぱり性欲満開で、生々し過ぎるぞ……」とかね。

 でも、まあ良かったよ。

 終盤、思いを寄せた教官に迫る(←やはり肉欲だけ……)のだけれど、教官は「何をしている! 外に出て待ってろ! すぐに出ろ!!」と拒絶しはするものの、その後で談話タイム。

 「お前みたいな奴はこれまでにも居たし、これからも居る。海兵隊からゲイを排除したら、海兵隊そのものが存続しなくなる。ゲイもストレートも、黒(ブラック)も白(ホワイト)も無いんだよ!! ただ、わきまえろ!!」ってな風に。

 このシーン、良かったよ。

 あと、無事に一人前となったフレンチを母が祝いに来て、皆と一緒に食事をする。そこで「一緒に暮らさない?」と言い出すのだけれど、フレンチがまだゲイである(←そりゃあ、そうだわな)という事を知って失望。「食欲が失せたわ…… 帰る!!」となってしまう。フレンチの仲間達は、その様を目にしてフレンチにエールを送るのだけれど、母には届かない。けれど、最後、母が心情を吐露する。

 「命が終わる最後の日まで貴方を愛しているわ。……でも、受け入れられないの……」って。

 そうだわな。そういう複雑な心持ちをね、ちゃんと描いているよ、この作品は。決して甘くない。悪戯なウェルメイドに走らない。そこも良かったな。

 まだまだ粗削りだけれど、秀作と言って良いのではないでしょうか。
CINEMASA

CINEMASA