リプリー

アバター:ジェームズ・キャメロン3Dリマスターのリプリーのレビュー・感想・評価

4.0
レーザーIMAX3D字幕版にて。
ジェームズ・キャメロンという人が本作公開時に追求したのは、立体感、没入感という意味での3D。過去にも3D映画はあったが、それは要所要所で画面から何かが飛び出すというギミック的な使い方で観客には飽きられ割とすぐに衰退した。では、アバター公開時はどうだったか。確かに驚きはあった。しかし、いくら奥行きや没入感といっても我々は2Dで見ていても脳内でそれくらい補完するのではないか、と感じた人も多かったはずた。その証拠にアバターに続けと続々3D上映が乱立したが、正直どれもパッとしなかったし、結局飛び出す方向での効果を原点回帰的に狙っている作品もあり、そこまで普及はしなかった。作り手も配給・上映をする送り手も、そして観客も3Dにいまいち馴染めなかったといえると思う。
そして時を経て、サブスクの動画配信サービス全盛期。作り手が積極的に撮影方法やカメラ技術へのこだわりを披露し、映画館で見る重要性を訴えた。それに呼応するかのように映画館の上映形式も多様化し、観客もどれが最適か見極めるようになった。
そんな中での二作目の公開を記念した一作目リマスター版の再上映。
この言い方は我ながら大げさだと思うが、キャメロン監督の映像技術に対するこだわりに時代が追いついたといえるような気もする。
まあ、3Dが映画において必要な表現か、それが映画の進化なのかはまた別の話だと思うが…。

さて、前置きが長くなった。
公開時に見たきりで、かなり話を忘れていたが、見ているうちに「ああ、こんな展開だったな」とすぐに思い出した。というか、映画なりドラマなりで物語に触れたことがある人ならおおよその展開が予測できるのではないだろうか。だからといってつまらないかと言えばそうではなく、キチンとアガる展開がありそれなりにハラハラしたり楽しめたりする。映像的に今見てもフレッシュで迫力があるのは本当に大したものだと思う。
しかしながら、この物語あくまでもこちらの予想の範囲内の出来事しか起きない。僕なんかは後半一時間半なんかは「もう分かったから」と思ってしまった。もちろんこの新しい映像を見せる上であえてやっていることだ。
よく言えば、誰もが好きな古典的物語。悪く言えば、誰もが知る類型的な物語。それでもいいとは思う。でもそれで3時間はやはり長い。人物も類型的なところから一歩も出ず、でも3時間使っている割にはしっかり描けているとも言えない。
例えばナヴィ側は初めからいい人たちなのが分かり切っていて、それを裏切らない。せめて最初は「うわ、コイツらやっぱり原始的で暴力的で、話は通じないし最悪だわ」と思わせる猫写があればどうだろう。それさえあれば主人公がナヴィ側に肩入れするプロセスがより感動的にはならないだろうか。百歩譲ってそれはいいにしても、人間サイドの猫写は極端に薄く、あの人はなんの意味もなく最初からいい人で、悪役はその立場から動かない。それが本作を古典的ではなく類型的と感じさせる所以だと思う。

とはいえ、とはいえだ。やっぱりそこそこ面白いし、映像的に古びない迫力がある。
本作は森が舞台だが、次作は海で予告編を見たとき「これは見なきゃ」と思った人も多いハズ。
それだけでもやっぱりキャメロンスゲェ、とひたすらに感服する。
さて、現在ブッチギリで世界興行収入ナンバーワンだが、果たしてパート2はそれを超えるか…。歴史的瞬間に立ち合っていることは間違いないので、今これを映画館で復習する意義は100%ある。