なべ

アバター:ジェームズ・キャメロン3Dリマスターのなべのレビュー・感想・評価

3.5
 久しぶりに見るナヴィの青い勇姿。ディスクは持ってるけど、あのパンドラの見晴らしのよい奥行き感と広がりはやっぱりスクリーンで見なきゃね。というわけでIMAXへ。
 さすがにいま観ると話が古くさい。でもキャメロンの作風に、バカっぽいとか人物の造詣が薄っぺらいとかモンクをいうのは筋違いってもんだ。ここは頭を空っぽにして、幼稚園児でもわかるストーリーと縦横無尽なアクションを存分に味わいたい。
 当時はアバターって言葉もよくわからなくて、あの青い異星人がアバター? アバター星人?みたいなトンチンカンな会話もあった。今となってはアバターってタイトルでいいのか?って思っちゃう。アバターであることは設定のひとつだけどそんなに重要じゃないし。

 今回あらためて気づいたのが、キャメロンの演出のわかりやすさ。
 驚き、興奮、共感、信頼、苦悩、高揚、絶望、歓喜とそれぞれの感情を1シーンにひとつずつ割り振ってる安心設計。どういう気持ちで観たらいいか一目瞭然。バカでも間違えようのないシンプルな心の動きを順序よく味わえるようになってる。まあバカっぽいのはそういうところなんだけどね。たいてい人の気持ちは相容れない要素が入り混じってて、そこにニュアンスが生まれるんだけど、それを単純化しちゃうと途端に幼児っぽくなる。
 例えば、アバターに初接続したときのジェイクのはしゃぎ様。2009年には自立できる喜びを全身で表現したニヤニヤシーンだったのに、2022年には周囲に迷惑をかけるクソガキじゃんと眉をひそめてしまった。わずか13年で周りへの配慮が欠けることがこんなに罪な社会になっちゃったんだね。ニュアンスが含まれない単純表現だとこんなにも陳腐化するのが早いんだ。
 悪役のクオリッチ大佐もそう。初公開時には軍人の性みたいな頑固さ、一徹さを感じたんだけど、今は単なるハラスメントバカにしか見えない。悪役って名札付いてそうな。本来なら彼には彼の理屈があるんだけど、そこは考えなくていいですからって言われてる感じ。「俺はクオリッチ大佐の気持ちわかるぜ」とは言わせないつくりになってるのな。

 まあそんな感じで、ディズニーランドのアトラクションのように段取りが入念で、否が応でもアガる仕掛け。気持ちまでコントロールされてる。今さらながら、キャメロンのエンタメ力を思い知った。しかし思いっきりがいい。さすがエンタメ映画芸人。
 あ、シガニー・ウィーバーのアバターは本人よりかわいらしかったよね。ちょっと少女漫画っぽくて。
 さて、続編のウェイ・オブ・ウォーターでは、そのあたりのバカっぽさがどう進化してるのか…。
なべ

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