VisorRobot

フィリピンパブ嬢の社会学のVisorRobotのレビュー・感想・評価

フィリピンパブ嬢の社会学(2023年製作の映画)
3.5
フォーラム仙台で見た。昼の回。おじさんを中心に意外と人が入っていた。やはりフィリピンパブにはみんな興味があるのか。昨年公開された『セールス・ガールの考現学』(モンゴルのセクシーグッズショップで働く女子大生の話)はタイトルに影響しているのか。でも、元の親書自体が先にあるしなあ。。など。

「音響、撮影、字幕、全部へったくそやなー」

最初はそう思った。前田旺志郎演じる主人公の独白の音声はほかの音響に対して明らかに大きすぎ、大学構内を歩く際の動きはぎこちなく、字幕は別になしでも伝わるようなシーン(フィリピンパブ嬢がDVにあって泣いている)でもでてくるし、ちょっとタイミングが早い。字幕にネタバレを食らうなんて!

そもそもなぜ主人公がフィリピンから来た女性の取材に興味を抱いたのか、どうやってあの教会で出会ったパブの女性と知り合ったのかも描かれていない!

ちょっと!!
俺は焦った。

ただ、そこは実話をもとにした映画の強み。何となく映画のリズムにも慣れるとだんだん気にならなくなっていく。話自体はいうてみれば江戸時代の遊郭に訪れた庶民の男が水揚げできねえけどよお、、好きなんだよう式の一番おいしさが分かりやすい話なので、そことフィリピンパブの女性を重ね合わせるのも失礼かもしれないが、わかりやすく、見やすい。

また、あんまり高偏差値ではないであろう大学のちょっとねじのおかしな教授とか、実際のフィリピンの方のキャストとか、主役の前田旺志郎などの熱演はよかった。結局、映画館には人間を見に行っているので、人間が頑張っていたらそれなりに見える。

最終的に、ヤクザ(風の男)を警察に突き出し、フィリピンパブは壊滅、二人は子供を2人設けて幸せな家庭を作りました、という物語ははっきり言って胸糞である。

いや、最初のDV問題とか何にも解決に至ってないし、二人以外の客引きの気のいいフィリピン人眼鏡男性とか、同僚とか、みんな強制送還になったり逮捕されたりしたかもしれないし、お前ら、自分たちが良ければそれでええんか、と。

そういえば、警察署長が「あの子、気にかけてやってくれよ」といった伏線も特に回収されなかったな!

元の親書自体は『フィリピンパブ上の経済学』という続編も出版されていてそれなりに社会派な側面もあるのだとは思うけど、最終的に春日井市の宣伝として商店街を移すところも含め、社会問題に本気で向き合うつもりはない呑気な庶民様のガス抜き話だな!と憤る気持ちもある。

とはいえ、俺も彼女らのために何かするわけでもないし、テーマ自体は面白いし、これでいいよ、もう。という投げやりな気持ちもある。

ちなみに昨年はフィリピンパブデビューして実際にフィリピンにも行った。フィリピンは最高の国だし、フィリピンパブは楽しいよ。
VisorRobot

VisorRobot