回想シーンでご飯3杯いける

ジャズマンズ・ブルースの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

ジャズマンズ・ブルース(2022年製作の映画)
3.9
人種差別が激しかった1930年代のジョージア州を舞台に、ジャズ・ミュージシャンを目指した黒人の兄弟と、彼らを囲む3世代の人生を描いたNetflixオリジナル作品。監督はアカデミー賞特別賞受賞のタイラー・ペリー。

Netflixには、チャドウィック・ボーズマンが当時のジャズ・ミュージシャンを演じた「マ・レイニーのブラックボトム」という名作があるが、それに匹敵する内容であると同時に、白人のふりをする事で社交界に入り込もうとする黒人をテーマにした「PASSING 白い黒人」の要素も加わり、なかなか複雑な構造と人間模様を描き出している。

1987年のシーンから始まり、1937年、1947年と、長きに渡る時の流れを背景にしながら、登場する家族も各々の問題を抱えており、物語の全てを把握するのに少し苦労してしまうのも事実。それだけにラストシーンが発する差別に対する強烈な皮肉がずしりと心に響く。

ジャズ・ミュージシャンが主人公の作品という事で、演奏シーンの演出も凝っている。バユとその母ハティが歌い出すと、お客さんの動きが華やかになる。その様子を天井から捉えるカメラワークが秀逸だ。

差別の絶望の中で、黒人達が音楽に込めたメッセージを感じ取る事が出来る。社会派でありながら、とてもエモーショナルな作品と言えるだろう。