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プー あくまのくまさんのAZのネタバレレビュー・内容・結末

プー あくまのくまさん(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

原作『くまのプーさん』がパブリックドメインになったことでイキイキと作られたスラッシャー・ムービー。

面白半分で『くまのプーさん』をホラー映画化しよう!という行動そのものは気に食わないが、残念ながらスラッシャー映画としてはちゃんとしててジャンル映画的には面白い部類。
強いリスペクトを感じることはないものの、きちんとアッシュダウンの森で撮影してたり、原作要素をディズニーと被らないように抽出したり、何しかちゃんとしようとはしている。

そして我々が「クリストファー・ロビンとプーの絆」をすでに承知しているという前提が成り立っているので、キラーとサバイバーの複雑にグチャグチャした愛憎がスッと入り込んで成立しているのがズル強い。
親に捨てられた子どものように、裏切られるはずのない愛情に裏切られたショックがプー達を血に飢えた野生に戻す(プー達はぬいぐるみではなく異種交配種の怪物)。
それによって人間を、クリストファー・ロビンを強く憎むようになるが、心の中には楽しかった思い出は色褪せずに残り続けており、愛と憎しみの狭間で苦しむプーはハチミツの涙を流すのだ。
クリストファー・ロビンもまた、子どもの頃のままに無邪気にプーの善なる心を信じようとする。
互いに殺し合う間柄になっても、2人は互いを強く愛したままなのだ。
これはハートフルな原作を魔改造する卑劣ムーブが生んだ面白みだが、とにかくこれによって物珍しい視点のスラッシャー映画を生み出すことに成功してしまっている。はっきりズルい。

油断してると無駄なシーンが混じったり、野生化したクセに人間の道具を使いこなしてくるのはズルだろ、とかGET OUTなのか殺したいのかハッキリしろ、とか急に出てきた知らない女でドラマを盛り上げようとするな、とか何だかんだ思うところもあるのだが。そういうのが全部面白要素に出来てしまうのもスラッシャー映画の強みなのでこれはこれでイケる。グロ描写もイケイケで頑張ってる。
監督は「お前達の思い出を破壊するために作った!」みたいな感じの最悪なことを言っているが、プーさん大好きな人以外が観るには困ったことに面白い仕上がりだろう。

監督は続編と、「バンビ」「ピーターパン」のホラー映画化も進めてるのでいつかディズニーに怒られて欲しい。
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