小林モンジャ

わたしの魔境の小林モンジャのレビュー・感想・評価

わたしの魔境(2022年製作の映画)
2.0
令和に台頭するカルト宗教のストーリーをオウム真理教に関係した人物とのインタビューパートと織り交ぜながら進行する。

カルト関連は少し齧っている自負があるものとしては期待していただけにガッカリの出来。

腹が立つ映画ほど長文になるのですが、今回もかなり長文で書きます。

単純に完成度が低すぎるよ。

・2つに分けた構成は蛇足。100分に対してインタビューを入れたことでストーリーは上っ面をなぞらえるだけで話として単純に面白くない。

・新入社員に対し自社はマルチ商法と公言する会社なんか存在しない。社員すらも良いものだと信じ込ませ、さらにここで結果を残すことで夢を実現できる!とか言って俄然モチベーションをあげさせるのがこういうタイプの会社が存続するうえでのマスト。
→宗教ではない、現代に巣食う別のカルト的存在という象徴にしたほうが良かったはず。カルトのような団体から逃げ出したらまた別のカルトにハマるという構造のほうが面白くない?一応退職時の晴れ晴れしい表情がそれなんだろうけど、もっと深く織り交ぜられたはず。

・主人公が入信するに辺り、信者がいきなり現象界やアストラル界なんて話をするパートに違和感。後継団体がそうだがまずはヨーガを入口に実践させ、関係が解れた状態で徐々に精神世界の話に持ち込まないと逃げられます。
→少し前ならコロナウイルスにかからない免疫ヨガなどで新規の信者を集めているけど、そういった人にいきなり精神世界の話なんかしているとでも思っているのか?

・オウムの5年以上に渡る変貌を数十分間の間に入れた結果、過激への変貌が急激すぎて違和感。あんなに熱心に勧誘してた女性が次の場面ではきっかけも曖昧に脱会を申し入れたり、入信した男性が次のパートでは溺死させられたり。

・令和に台頭するカルト宗教の割には入信して以降はただオウム事件をなぞらえただけ。入信するきっかけも家族、職場、社会からの孤立が原因ですがそれって令和に限らないのでは?YouTuberの動画を見て体験に申し込んだくらいしか現代らしい要素が無い。

・最後は自分の親をポアする為に自宅に襲撃するシーン。信仰具合も弱まっている中で自らの手で自分の親を刺殺するような事をさせたら洗脳が解きかねない。だから彼らは盲信する若者の男性を実行部隊として使っていた。
→オウム事件でも親が子のいるサティアンを訪れて帰ってこい!と連れ戻そうとするが周りに止められるニュース映像は何度も報道されていた。直接団体側が合わせるようなマネはさせない。

繰り返しになるが、令和の時代に台頭するカルトであれば宗教色はもっと薄めていないと時代にそぐわないと私は思う。
オウム事件から30年近く経ち、新興宗教への嫌悪感もだいぶ薄れてきたとは思うがそれでも今の世代の若者からすれば宗教とは神秘性よりも先になんか怖い、なんかヤバそうというイメージを漠然と持っているのではないだろうか。
今作がやっているのはなんのデフォルメもせずにプチオウムを現代で再現してみましたというだけ。

コロナウイルスと絡めた陰謀論者、某新党のようなカルト的な集団、過激な内容を発信するyoutuberの信者など現代でもカルトとそれを盲信する人間は大勢いるのだから、そうやって誰でもいつでものめり込む可能性があるという要素をもっと入れて欲しかった。

監督の技量不足とカルトに対しての理解力の低さばかりが目立ってしまう駄作。