きくそ

わたしの魔境のきくそのレビュー・感想・評価

わたしの魔境(2022年製作の映画)
4.0
オウム真理教の元信者や取材関係者などへのインタビューとコロナ禍の現代で若者がカルト宗教に傾倒していくドラマを重ね合わせた映画です。
インタビューパートに合わせてドラマパートのストーリーが進んでいくという仕立てなのですが、ドラマの方は良いかと言われると正直微妙なところです。家庭環境に恵まれなかった主人公が就職を期に坂道を転げるように不幸になっていきカルトに出会うのですが、ちょっとジェットコースター不幸すぎてそりゃまあ心の拠り所を探すのもやむ無いよなという気持ちになってしまいます。カルト宗教にハマる信者は現実に抱える苦しみが多いというインタビューを受けてのドラマなのでしょうが、もう少し視聴者への啓蒙も兼ねてリアリティのある設定にしたものを見たかったというところです。現代設定にした割には入信した後が再現ドラマの域を出ないのもやや残念でありました。
もっともこのドラマは家族の絆で宗教の洗脳が解けるところで終わるのですが現実はそうではなかった、という自虐的な一文で締められており、ドラマはインタビューの飾りに過ぎないのだと思います。特に実際に当時のオウム真理教を経験している信者の回想などは日常で聞き得ない心理状態を覗くことができて、まさに事実は創作より奇であります。
なんだかんだと言ってもこの手の話は興味深いので高評価です。カルト系スリラーを期待するものではなくドキュメンタリーとして見ることをおすすめします。
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