とり

ヴィーガンズ・ハムのとりのレビュー・感想・評価

ヴィーガンズ・ハム(2021年製作の映画)
4.0
これはなかなかの問題作。
内容的にはかなりエグいのに痛快。
肉屋で人肉を売る映画はそれなりにあるけど、ヴィーガンネタを混ぜてくるところが今風で新鮮。美食の国フランスらしい。
日本語タイトルが一番粋だな。

よくある猟奇殺人ものと一線を画すのはテーマだけじゃないです。キャスティングが素晴らしい。
特に主演夫婦の2人。旦那の表情が場面を的確に捉えているな、と思ったら監督さんでしたか。道理で。
ヴィーガン役俳優の人選もステレオタイプが極まってて楽しい。ぶっ飛んだ会話の数々も虚実混ざった感じで絶妙です。
この活動家の人達の言うことも一理あって、美食というより飽食の現代への皮肉もたっぷり。
ポスター画像にもありますが、スポーツハンティングにも何か言いたいようですね。ほぼ全方位を攻撃するスタイル。
友人夫婦の嫁がいちいち高級自慢をしてくるのは、関西人がどれだけ安く買えたかを熱弁するのと似てるかも。

お肉自体への言及も多め。オープニングで旦那が食肉を大切に扱うシーンに全てが集約されている。職人へのリスペクト。命を頂くことも含んでると思う。
究極と至高の肉を求める二人。決して殺しがしたいわけじゃない。
菜食で育った肉はやっぱり美味いんだなという妙な説得力。
イラン豚なる屁理屈も都市伝説レベルのアイデア。成長ホルモンへの問題提起。
神戸牛が世界一らしい。やっぱり菜食が正義、捕食側は肉食というのも皮肉の一種かな。

途中までは悲しい結末だったら嫌だなと思ってたのに、気がつけばそこはどうでもよくなってる作り。
少なくとも旦那は苦悩してるのに悲壮感がまったくない!
結末については死刑制度へも一石を投じてるような気がしますね。

序盤が一番グロテスク描写が激しいので、そういうのが苦手な人はそこだけ頑張って乗り越えればあとはなんとかなると思います。見て損のない映画。
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