菜食主義者は美味しいか?
肉屋が人肉を出しているというネタは、ホラー映画では珍しくはないアイデアだ。
行列のできる肉屋が、実は人肉を取り扱っているというパターンだ。
そんな中で本作は一捻りして、人肉の対象をヴィーガンという菜食主義者のみにターゲットを絞って行う。
なぜなら彼らは良い餌を食べ、健康的な生活で身が引き締まって美味いという理屈だ。なんともまあフランス映画らしいブラックユーモア満点の映画だ。
ある意味アイデア一本勝負! とも言えるが、世間が抱いているヴィーガンに対する少し嫌な感情が、良いスパイスになっている。
肉屋を襲撃する過激派ヴィーガンというのは残念ながら実在し、ニュースを騒がしている。そんな彼らにムカつきを覚えるのは仕方ないだろう。
だからホラー映画におけるモテる陽キャ男性を見てる時と同じ気持ちで、狩られていく彼らを笑って見ていられる……かなりブラックな笑いだが。
ただ基本的な映画の書き方はシンプルにまとまっているので、構造そのものはカップルの猟奇殺人鬼ものとして王道的な展開。殺しの表現がどんどんと簡略化されていき、ノリノリで狩りの様子が繰り広げられる様は、絵面含めブラックユーモアとして楽しめる。
特に銃で人間を狩りながら、料理のスパイスについて軽口を叩きながら会話するシーンはなかなかインパクトがあり、ホラー映画としても好きなシーンだ。
ヴィーガンというテーマ故に、真面目になり過ぎず、皮肉程度に抑えているので、ストーリー自体は楽しめたが、グロ演出は結構強めなので、かなり人を選ぶところだろう。
個人的にはそれなりに楽しめたが、ヴィーガンの良し悪しを問うような難しい映画ではなく、悪趣味な娯楽映画。代替肉のソイジャーキーでもかじりながらどうぞ!