bebe

ヴィーガンズ・ハムのbebeのレビュー・感想・評価

ヴィーガンズ・ハム(2021年製作の映画)
3.0
最近流行りの、とか言わないほうがいい、ヴィーガニスムをこれでもかと皮肉った作品。とはいえ、アンチ=ヴィーガニスム作品とも言えない。破壊活動家(ヴィーガン)vs破壊活動家(アンチヴィーガン)の、どっちもどっちの戦い。
 コメディ調だが映像はグロテスク。カニバリスムなのにミステリー感やホラー感はほとんど感じられない。シーンとして存在するだけ。非常に悪趣味なブラックジョーク。あと夕食にお肉が食べれなくなる。
 イデオロギーを多分に含むテーマをコメディに仕上げるタイプの映画、最近のフランス映画には結構ありそうだが、真面目に観ればいいんだろうか。でも笑い飛ばすものでもないよな、と。

- tu m’a fait bouffer de l’homme?
  (私に人肉を食べさせたの?)
- du vegan. C’est un des herbivores.
  (ヴィーガンのね。草食動物だろ。)

 店を襲われた復讐としては明らかにやりすぎ。なんだか夫婦だけでなく、もっと大きな何かの代弁者なのかと思わされるくらいに思い切った行動力がある。きっと店の経営難と合わせてフラストレーションが溜まっていたのだろう。
 カニバリスムを嫌がりながら、聖体拝領を食人の肯定のために持ち出すあたりも雑なロジック。
 そもそも、ヴィーガン・ハムを作るためにヴィーガンの中から肥えた霜降りを探すあたりがすでに破綻してるような気もする。

 「何か」への抵抗運動が破壊活動につながるのは、おかしい。と思う。ただ、この映画はやり返してそれをお互い様にしてしまう。だから社会問題を扱いはするが、その解決を願う作品でもなければ、そもそも主張があるわけでもない。もちろん反省を促すこともない。白か黒か、肉食か草食か、保守か革新か。そこにグラデーションなどはなく、二者の「個人の信条」を徹底的にぶつけ合う。主張の押し付け合いの泥試合。戦争の記憶。
bebe

bebe