クロ

ヴィーガンズ・ハムのクロのネタバレレビュー・内容・結末

ヴィーガンズ・ハム(2021年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

何というか、フランスのブラックコメディはどぎつさが一味違うなという感じ。

最初は人肉食に強く感じる嫌悪感が、段々「美味しそうな肉」としか見えなくなっていく過程が体感出来てヤバい。

金と美味しい肉への欲求から壊れていく主人公夫妻だが、友人夫妻もだいぶ壊れているし、過激なヴィーガンもぶっ壊れている。差別発言もバンバン出てくるが、これが際どいながらもコメディとしてコントロールされている、その手腕がさすがだ。(もちろん嫌悪を感じる人もいるだろう。)

ブラックコメディを見ている間はこちらも壊れているので、苦笑いしつつもかなり笑える。必死に逃げるヴィーガンを追いかけ回し、トロフィーハンティングのノリで殺したヴィーガンと記念写真を撮ったりするシーンがコミカルだ。

夫が割と良心的?なのに妻が完全サイコパスだったり、友人夫妻も妻の方がヤバめだったり、他にもうっすら女性の描き方で気になる部分もあるけど、そういうコメディだからということにしておく…。


ラスト、2人はソフィーの大好きな番組で取り上げられ、猟奇的殺人犯の仲間入り。良かったねソフィー⁉︎

そしてソフィーが「ウィニー」と答える場面。裁判官の質問が字幕では「後悔することは?」、吹替では「取り戻したいものがあるか?」となっている。
「後悔すること」だと、善良なウィニーを殺したことを後悔しているようにも聞こえるし、ウィニーのペースメーカーに気付かなかったことを後悔しているようにも聞こえる。「取り戻したいもの」だと、格別に美味だったウィニーをまた食べたいようにも聞こえる。
いずれにしろ、観客はソフィーの切なげな「ウィニー」に最後に吹き出してしまうのだ…。完璧すぎる。

フランスの人肉もの肉屋の話といえば、30年ほど前に『デリカテッセン』があったのを思い出した。当時内容を消化しきれなかった気がするので、機会があったら見直したい。
クロ

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