ダネクン

メトロポリスのダネクンのレビュー・感想・評価

メトロポリス(2001年製作の映画)
4.0
「わたしは誰?」

物語は往々にして主人公が成長して、自分が何者なのかを悟るものが多いけど、本作の主人公・ティマは成長の末、結局自分が何者なのかが分からなくなってしまう、というのがあまりにも哀しい。

勿論ティマはロボットであり、レッド公やロートン博士によって、明確な目的を元に生み出された存在ではある。
でもそれは彼女自身にとってはまったく預かり知らぬ事であり、彼女が選んだものでは勿論ないのだ。

様々な偶然が重なった結果とはいえ、折角自我を獲得したのに、本人の意思を無視する形でそれを奪われて、でも最期に一瞬だけ取り戻した時に、思わず出る言葉が「わたしは誰?」だなんてあまりにも哀しすぎる。

自我を持つことは出来たのに、最初から最後まで自分の意思で歩むことが出来なかったティマの一生って、一体何だったのだろう?

そんな空虚さが切実に伝わるあの場面で「愛さずにはいられない」(タイトルから分かる通り、これも“ままならなさ“についての曲だ)なんか流されてしまったら、そりゃ泣いてしまうのだと思う。
気障な選曲なのかもだけど、それが許される程に作品の強度があるのと、何よりそんな選曲が許される時代があったのだという事を凄く羨ましく思う。
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