あんじょーら

福田村事件のあんじょーらのレビュー・感想・評価

福田村事件(2023年製作の映画)
2.8
森達也監督   太秦   吉祥寺アップリンク


公開7日目の朝一で観てきましたが、物凄く混んでいいましたが、もっと混んでいたのが、山田洋二監督作品『こんにちは、母さん』で、高齢女性が大挙して押しかけていて、誰が観るのだろう?と思っていた作品でしたが、ちゃんと受容はあるんだな、と確認出来たのは良かった。びっくりしたけど。


ネタバレ無しの感想です。出来れば多くの人が観た方が良いのですが、でも観た方が良い人には届かず、何となく、観て溜飲を下げたい層に響くであろう作品になってしまったのではないか?と思ったのが観終わった後の最初の印象です・・・


小池都知事(私は東京都民なので責任がある・・・)や松野官房長官(選挙区は千葉3区)のような人物が現在に存在するうちの国で、非常に重要な事件を扱った、劇映画であり、実際の事件を基にした映画です。


過去の過ちから学ぼうという姿勢が無い、という事が恐ろしいですし、私含むうちの国の集団心理や同調圧力を考えると、本当に恐ろしいのですが、自国民を殺害しているという事実は変わらないわけで、本当に恐ろしです。


もっと言うと、過去から学ぶよりも、自国の良い部分、心地よいものしか見たくない、という姿勢を保守とは呼ばないと思いますし、なんなら無かった事にしてしまう、というのが恐ろしい。心地よい方を選んだ、とも言えるし、ゲッペルスのいう『しつこく同じように繰り返せば、嘘でも信じる』というプロパガンダが今でも十分通用する、という事を現在の国家レベルで行っているのが恐ろしい。しかも報道があっても問題視すらされていないし、既に手遅れな感覚がある。


立場的に、アメリカにおける黒人差別の歴史と同じ構造もあると思います。差別していないという事にしていても、内心恐れているからこそ、そして迫害している自覚があるからこそ、恐れているわけで、それが大きな災害時に、冷静さや事実確認を疎かにしてしまいかねない状況の時に、今でも起こる事件だと思います。


そう言う意味で作られた意義はことのほか大きい。特に邦画では珍しいからこそ、意義は大きい。


大きいんだけど、そして、時系列が必要だし、それなりの時間がかかるのも十分理解出来るんだけど、劇映画としてのテンポの悪さ、136分は、流石に長すぎるし、テンポの悪さが余計に目立ってしまっているのが本当に残念。


役者は総じて良いキャスティングで、中でも東出昌大、田中麗奈、永山瑛太の3名は非常に良い演技で(演出に問題があるとしても)満足です。中でもキャラクターと演者の違和感が最もなかったのが、初めて観る杉田雷麟さんです。凄く存在感含めて、キャラクターに合っている。今後この人が出演する作品なら見てみたいと思わせるに十分な魅力を感じました。


過去の、というか今でもネットが遮断されるような、混乱時に起きかねない惨事について学びたい方にオススメします。


もっと劇映画として、完成度が高かったら、観た方が良い友人の分までお金を払ってでも連れて行きたい作品になってたらなぁ・・・


作品の存在意義だけでも4.0以上付けたい。んだけどあまりにテンポが悪くて、少し詰め込み過ぎなんで、この点数。


ネタバレありの感想はコメント欄にて。