コーディー

福田村事件のコーディーのレビュー・感想・評価

福田村事件(2023年製作の映画)
4.2
〝違い〟への偏見が混乱やデマに煽られ瞬く間に排除すべき標的を作ってしまう。
国家を、村を、家族を守る為、あるはずのない正当性を盾に加害に至った100年前の惨劇。
関東大震災が発生した9月1日を境に一気に高まる不快な緊張に身震いしながらも、悪しき歴史を直視してこそ…
そんな戒めと祈りに心抉られた。

プロパガンダを盲信する者や冷静さを取り戻そうとする者、そして傍観する者など、この時代の日本に流れる戦争や他民族への意識を福田村の日常を通して見つめながら、正確な情報を得られず一線を越えてしまう人間の本性を浮き彫りにする…
と、その一方で朝鮮飴の甘さを知った行商団の変化、彼らの叫びが重く心に響いてくる。

支配して当然という価値観がますます理解を遠ざける恐ろしさ。
韓国から帰ってきた元教師と村民の間にある到底埋まらぬ溝に絶望したり、かと思えば、嫌いだけど踏み止まれる冷静さを感じる人間もいたりと多様な加害性が表面化する終盤の暴動シーン。その凄まじい緊迫感と息詰まる俳優さんの演技に圧倒された。

傍観者として打ちひしがれる井浦新さんの演技も素晴らしかったけど、
〝朝鮮人は嫌いだ〟と言い放ちながらも、この世界の歪んだ秩序には何やら思うところがありそうな渡し守の揺らぎ。演じる東出昌大さんの善にも悪にも流れない存在感が個人的には一番興味深かった。

あと水道橋博士も良かったな〜
こいつ話通じねぇ…な憎たらしさはあるけど、威勢から溢れる弱さ脆さもあったりギリギリな精神状態なのが伝わってきた。

凄い映画でした。