Rin

福田村事件のRinのネタバレレビュー・内容・結末

福田村事件(2023年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

観終わって言葉にしようとしてもまとまらない。「これが正義だ」と決めつけたら途端にそれは白々しい偽善と変わり、スルスル落ちていく、そんな感覚に襲われてしまった。

印象的だったのは、四国の行商達を殺そうとする村人達から守ろうとしたのは、普段は他の村人達から浮いていた面々だったこと。女好き、不倫妻、自分の罪に苦しむ男、デモクラシー主義者。彼らは周りからすれば愚か者であったが、言ってみれば自分を殺すことなく思うままに生きていた。自分で感じることに蓋をせず、自由に自分で悩み考えようとしていた。
一方、集団心理に侵されて発狂状態になったのは皆自分で考えることを放棄していた者達だった。自分の人生が上手くいかないのを誰かのせいにし、こうすれば正義だと盲目的に信じ、噂(メディア)であっという間に洗脳される。
現代におけるカルト、いじめ、SNSの誹謗中傷、全ての集団心理はこれと同じだ。メディアは政府(権力者)の駒であり、差別はその手段である。

洗脳されたら真実が見えなくなる。
人間が人間を殺した、ということが。

正直、福田村事件や当時のメディアによる流言については記録があるのでそうなのだろうと思うけど、それ以外の背景の詳細、特に数字についてはどこまでが史実なのかはまだ分からないのでこの映画全てを「こんなことがあったなんて!」と丸呑みにできない自分がいる。

だけど少なくとも、メディアはなぜこれを言うのか、これによって誰が得するのか、私はなぜこれを信じようとするのか、それくらいは疑いの気持ちを持とうと改めて思った。

評価をつけようとしたら苦しくなる、そんな凄い作品。
Rin

Rin