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福田村事件のtanaのネタバレレビュー・内容・結末

福田村事件(2023年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます


映画「福田村事件」を見た。
1923年関東大震災近辺に実際起こった、凄惨な事件を題材にした作品だ。
事前にWikipediaで事件の概要を頭に入れておいてよかった。
おおよその時代背景や、事件への流れが把握できているので、あまりつまづくことがない。

震災の混乱に乗じて、マスコミや世間に忌避されていた社会主義者、朝鮮人が次々に弾圧されていく。
流言や噂話をまともに捉え、実際見たわけでもないのに、さも見てきたかのように話す人々。
現代のSNSでもよく見かける、自分の意見を持たない人たちに共通するものがある。

どこかで見たことがある役者さんが、出来損ないで唐変木な息子の役をしていた。
「岬の兄妹」のお兄ちゃんだ。
松浦祐也さん。
役にはまっていて、違和感がない。
「千夜、一夜」を見たときにダンカンも同じような役柄で、駄目なおじさん息子として、とてもいい演技をしていた。
融通が効かず、あまり頭の良くないおじさんを演じている役者が、役柄にピタリとはまると嬉しい。

水道橋博士が登場するが、この方の演じ方も、演じるを感じさせないほどだった。
事件の発端を担っていて、憎いけど、これがまた絶妙に憎めない。
身長があまり高くないのも周りとのバランスが取れていて、言葉は威圧的だが、なぜか恐くはない。
排他的で閉塞的なムラ社会で、真面目に自分の責務をこなそうと一生懸命なのだ。
演技は初めて見たが、とても良かった。
後からしみじみと思う。
また他の作品でも彼の演技を見てみたい。
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