圧倒された。
これが事実なのが恐ろしい。
部落差別と朝鮮人差別と絡みついた複合的な事件を軸に、集団心理の恐ろしさと全体主義的な思考の危うさを克明に炙り出す。
偶然に偶然が重なり、ラストは悪意と絶望といまさら引けない勢いと、そして祭り的高揚感とが入り混じる。息をするのさえ躊躇うような数分間。
死んだと思った夫が帰ってきた、あの「えっ」という安堵と絶望の顔。
水道橋博士のあの絞り出した慟哭。
力無い村長。
止められない人たちと、止まれない人たち。
みな実力派ぞろいの厚みある演技だった。
そしてまた、今でも起こりうることなのかもしれない。
被災中、SNSで飛び交う流言飛語が現実に侵食してきたあの感じを思い出してしまった。
同じ過ちを繰り返すのが人間ならば、少しずつその過ちを小さくしていくしかないのかな。
今年見るべき一本。