…後を引く重さ…
しかし後半に惨劇が待っていると分かっていればこそ、前半の日常描写における登場人物たちそれぞれの抱えている不満、力関係の様子がサスペンスとして強く機能し、130分越えの長尺も、鑑賞中全く長さを感じなかった。
松浦裕也さん演じる、一つ目のトリガーを引いてしまう男の造形が特に心に残った。「無知」「己の現状への不満」「マチズモ的なコンプレックス」そして“下”を作って安心する、差別の土台…
あくまで“この映画の中では”だが、「四国を知らない」がきっかけになってしまう件の、遣る瀬無さたるや…
所々「段取りのお芝居」に感じたり、一部の人物の差別を非難する物言いが完全に現代人のそれだったり…は、「仕様」として割り切って観れた。ただ、セックス（性欲）の扱いについては、核となるテーマと結びついているのか、やや疑問。
そして後半、どうしても「牛泥棒」を想起してしまった。
80年前のアメリカ映画を今必要とし、しかしそれが作りづらい状況、という2023年現在の日本…
加えて、適当な言い方ではないが「周縁で起きた、やや小規模な事件」という印象を抱いてしまいがちで、そこから『もちろんこれも埋もれさせちゃいけない事件だけどぉ……あるじゃん、ほら、ど真ん中にどデカいヤマがさぁ…！』という歯痒さも覚えてしまう。
