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福田村事件のspicaのレビュー・感想・評価

福田村事件(2023年製作の映画)
4.0
クラファンの時から気になっていたのに、やっと見た。
それまでは福田村事件のことを全く知らなかったので、そのことを教えてもらえただけでもありがたい。地味な映画だと思うが、予想外にたくさんの方が見ているようで、なぜかうれしい。今見ておく映画だと思う。よく製作してくださった。森監督の目の付け所はさすがだ。
ヘイトを放置しておく怖さを感じる。散々差別をしておいて、その酷さに自覚があるゆえに、仕返しされるのではないかと恐れ、怯え、凶行に及ぶ。気をつけなければならない。そしてまた、その刃はいつ自分の方に向くかわからない。まさか日本人である自分が朝鮮人と指摘され、殺されるとは思っていなかっただろう。
殺した人たちが極端に悪い人とは描かれていなかったところにも注目したい。最初のきっかけを作ったのは、夫が朝鮮人に殺されたのではないかと思い込んでいる若い女性だった。この部分はフィクションだとは思うが。空気がある方向に流れてしまうと、一気に暴走してしまう怖さがある。
わりと最近「八月、東京の路上で」を読んで、自警団の恐ろしさを感じた。軍や警察も虐殺に加担していたことを知った。この映画では活動家が処刑されるところが描かれていた。
在郷軍人会の水道橋博士も凝り固まった信念で、正義をかざしていた。こうなってしまうのだ、凡人は、おそらく。悪気なく。
他のキャストも素晴らしかった。
井浦新は元々好きだが、田中麗奈も好きになった。東出昌大は褒めたくないのに、映画の中ではホントにいつも素晴らしい。
過去の事件とせず、今の危うさとの共通点を探し、一人一人考えなければならない問題を含んでいる映画だと思う。

コロナ禍以来、映画館に全く行ってなくて3年9か月ぶりくらいだった。自分でも信じられない。転居で映画館環境も変わり、生活も変わり、なぜか足を運べないままだった。映画館はやっぱりいい。真っ暗な部屋に大きなスクリーン。身体ごと入っていける。他の人もいるのに集中できる。
また映画館に普通に行く自分に戻りたい。
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