人間の心に宿る差別意識を抉り出す良作。大災害の混乱に乗じて流布するデマに乗せられる人々の描写が実にリアル。彼らを凶行に走らせたのはそれなりの理由があったのかもしれないが、ちょっとしたきっかけで、堰を切ったように均衡が瓦解するシーンが特に印象的だった。
関東大震災100周年に合わせて、行政からは防災の備えばかり強調されるが、本当に気をつけなければならないのは本作で描かれるような集団意識なのではないか、と感じる。そして、我々は忘れてはないない、過去に何があったかを。自らを戒めてくれるような気合の入った作品を届けてくれた製作陣の心意気に賞賛を送りたい。
