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福田村事件のKのレビュー・感想・評価

福田村事件(2023年製作の映画)
3.3
森達也監督といえばドキュメンタリー映画の人という認識だったので本作の情報を初めて知ったときは驚いた。もっとドキュメンタリー的な手法を用いるのかと思いきや器用なカメラワーク。あとから荒井晴彦さんが関わっていることを知り例の要素に納得。集団・決め付け・排除の描写を見ていると『A』や『A2』にも似通った部分があったなと思い出す。そしてこの構図は現代にも通ずる。白磁の指輪。ハンセン病。デモクラシー。義父と嫁。湯の花。提岩里。豆腐。多数決。鮮人。正信偈から水平社宣言。「ちゃんと名前があるんです」。終盤の緊迫感はすごかった。センセーショナル。善と悪の描き分けははっきりしている。時代と立場を考えれば誰かを責めることはできない。こんな過去があったと世間に知らしめることにより、反省もしくは内省を促すことは可能だと思う。ただ史実を扱う以上は実在する場所や人を巻き込むことになる。双方の子孫、双方の村。脚色による映画内の嫌悪感と偏りは新たな誤解と差別を生まないだろうかと気にかかった。「書いて償わないと」。それを望むのは誰なのか。ネタとして扱っていないか。脚色なしのドキュメンタリーで十分にインパクトがあったように思う題材。監督のジャーナリズム精神は伝わった。
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