ノラネコの呑んで観るシネマ

ロスト・キング 500年越しの運命のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

4.5
面白い!
500年もの間行方不明だった、英国王リチャード三世の遺体を発見した、平凡な女性の物語。
シェイクスピアの芝居に描かれる、暴君としてリチャードに違和感を感じた彼女は、文献を調べまくりすっかり王に魅了されてしまう。
そして遂には仕事も辞めて、誰も所在を知らない王の遺体を探し始める。
リチャードはせむしであったと伝えられ、それゆえに心まで歪み冷酷な暴君になったと信じられてきた。
サリー・ホーキンスが好演する主人公は、難病の筋痛性脳脊髄炎を患っていて、仕事でも正当に評価されてないと感じている。
彼女は、ひょんなことから巡り会った時空を超えた「推し」に、自分を重ね合わせて深く感情移入し、歴史に埋もれた実像を解き明かそうとする。
墓所を探し当てるまでが意外とあっさりだなと思ったが、なるほど、彼女が真の困難に直面するのは、発掘が始まった後。
正規の大発見に、手柄を横取りして事実を書き換えようとする権力者が群がってくる。
後継王朝によって不当に貶められた王の悲劇が、形を変えて主人公に降りかかって来るのだ。
主人公と別れた夫との微妙な関係や、クスクスさせられる絶妙なユーモアは、さすがスティーブン・フリアーズ。
英国映画らしい皮肉も聞いた、見応えある人間ドラマだ。
今度シェイクスピアの「リチャード三世」観たら、印象が変わりそうだな。