櫻子の勝手にシネマ

ロスト・キング 500年越しの運命の櫻子の勝手にシネマのレビュー・感想・評価

3.8
残虐な王として名高いリチャード三世の遺骨の発掘に挑む普通の主婦の物語。
監督はスティーヴン・フリアーズ。

500年以上行方不明だったリチャード三世の遺骨が、アマチュア歴史家の主婦の指揮のもとに発見されたという実話。
実際はリチャード三世の遺骨の在り処を探し当てるまで8年もかかったらしい。

主人公のフィリッパ(サリー・ホーキンス)は少し風変わりな女性(有職母)だ。
離婚した夫とは、夫婦関係は終わっているのだが2人の息子を協力しながら養育している。
持病の筋痛性脳脊髄炎に苦しんでいて、おまけに中年という理由から職場の評価も芳しくない。
ファッションセンスも独特で個性的。

そんな彼女が、たまたまリチャード三世の舞台を観る機会がある。
シェークスピアによる戯曲は、リチャード三世を2人の甥を殺害して、王位を奪った冷酷非情な王として描く。
背中に瘤がある王は、犬にも怯えられる醜い姿だと言い、そんな惨めな男が悪に心を支配されるのは仕方ないと吐き捨てる。

その王に自身を重ねたフィリッパは、リチャード三世の人物像を調べ始め、シェークスピアの戯曲とは異なる事実を突き止め、リチャード三世の名誉回復をしたいと思い始める。

フィリッパが、空想のリチャード三世と対話するシーンが所々入るのだが、そのカットがなかなか面白い。
しかも、フィリッパの中のリチャード三世は、舞台でリチャード三世の役を演じていた役者なのだ。
長身でイケメン、爽やかな笑顔、颯爽と馬に跨る姿は、まさに王そのものである。

この物語は、平凡な女性の『推し活』からスタートしている。
だが、そうした活動が自己回復にも繋がっていく。
最後は息子たちの熱い眼差しと、リチャード三世の復権と彼女への叙勲で報われた。

サリー・ホーキンスの病的なまでのリチャード三世への執着の演技が凄い。
『ちょっとヤバいおばちゃん』を演じさせたら、彼女の右に出る者はいないかも。

因みに、日本でこの作品をリメイクするなら遺骨が不明の織田信長一択だろう(笑)