七沖

機動戦士ガンダムSEED FREEDOMの七沖のレビュー・感想・評価

機動戦士ガンダムSEED FREEDOM(2024年製作の映画)
3.0
“私の中にあなたはいます。あなたの中に私はいますか?“
劇場版制作の発表があってから、一体何年経ったんだろうか。もうさすがに実現しないんじゃないかと思っていただけに、この映画の公開は本当に待望だった。
自分の中には、まだちゃんとSEEDの思い出がたくさん残ってます!

自分が高校生・大学生の時にハマった作品の続編が、まさか20年後に作られるとは思っていなかった。
もうここまで待たされたら、ただの続編ではなく、同窓会みたいな感じだ。久々にキラやアスランに会えるのを楽しみに劇場に向かった。
本当は懐かしさもあって絶賛したかったのだが、率直な感想としては、観たかったものではなかったなという感じだ。

以下、少しネタバレも含みます。あと、かなり個人的かつ否定的な意見です…


















今回の時代設定はCE75ということで、TVアニメがCE73だったから2年後の話だ。
当然のことながら、登場人物たちは皆、思い出の中の若い姿のままだ。それはいい。すごく嬉しい。むしろ年取ったキラとか想像できない。だからそれ自体はいいのだが……
みんな、言動が若い。若いというか、未成熟な感じがする。
だが、自分はあれから20年の歳をとってしまっている。そのせいか、登場人物たちの振る舞いが若すぎて「え、今になってそれで悩むの⁉︎」と思うことが多くて、登場人物たちに感情移入出来なかった。
キラってもうTVアニメで成長済みだと思っていたのに、意外と成長していないのか…?
「みんなが弱いから!」って言っちゃいけないセリフだったと思う。ガンダムらしいセリフではあるが…。
特にキツかったのがキラと敵のボスで、彼らが感情をぶちまけまくるせいで、TVアニメで散々だったシンがマシに見えるほどだった。
ラクスの敵のボスに籠絡されそうになって、背景が異空間になって二人だけになる演出もちょっと古さを感じてしまった。見せ方にアップデートがなく20年前のままというのも地味に気になる点だ。
もうこれはこの映画に何を求めているかの観る側のスタンスの問題で、SEEDらしさを求めるか、新しいものを求めるかで評価が変わってくると思う。自分は彼らの人生のその先を観たいという気持ちが強すぎたのかもしれない…。
スターウォーズ新三部作の時も、自分はこのスタンスで観たのでEP7をなかなか受け入れられなかった。

そして、もう一つショックだったことがある。
カガリの声優が変更されている…!
アスランとカガリのカップルが好きだったので、これは個人的にかなりの衝撃だった。
同窓会に参加したら、1番会いたかった人が別人になっていたような気持ちになってしまい、すぐには受け入れられなかった。
いろいろ事情はあると思うので声優変更自体は仕方ないが、うーん…あまり声は似ていなかったと思う。

物語自体も、設定が複雑でキャラが多く分かりづらく感じた。
状況説明セリフが頭に入ってこず右から左に流れてしまうことが何回かあった。これは自分の集中力の問題でもあるが…。
新生国家を出さなくても別に良かった気もする。せっかくの新キャラたちがあまり活かされていないように感じた。ブラックナイツ……かつての悪の3兵器を思い出してちょっと懐かしくなったが、ただのアイコン的な倒すべき敵でしかなかった。この消化不良感、スターウォーズのレン騎士団を思い出した。

逆に、良かったのはバトルシーンで、ガンダムたちが素晴らしく動きまくるのは最高だった。これはちゃんと20年の技術の進化を感じる。TVアニメの頃は映像の使い回しがかなり多かったので、新カットだらけなのは素直に嬉しい。
あと、登場人物が未成熟だと先程書いたが、シンたちデスティニー組に限っては、前作が前作だっただけに違和感がなく、微笑ましく成長を見守れる。
この映画でシンの株はかなり上がった。
いっそ、ドン底のシンが立派に成長する話を映画の軸にした方が面白くなったのではないかと思う。

いいところもたくさんあるが、それは主にデスティニーへの救済措置的な意味合いが強いなと感じた。
主人公のキラとヒロインのラクスはアニメの頃から完璧すぎてちょっと近寄りがたい印象があったので、彼らのあんな姿は観たくなかった…というか、20年ぶりに描かれるのがこれであって欲しくなかった。
20年という時間の経過は、ファン側も成長するし価値観すら変わる年月だと思う。
久々の続編はファンとしてもちろん嬉しいのだが、20年ぶりの今描くべき物語がこれでいいのか……というのが、今の正直な感想だ。
七沖

七沖