夜ノ砂

映画 ネメシス 黄金螺旋の謎の夜ノ砂のレビュー・感想・評価

3.5
“楽しめるけどパンチの効きが今ひとつ”なのはテレビ版と同様だが、悪夢と現実が交錯するタイムリープ風+サスペンス風となったこの映画版は、意識をコントロールする技術を逆手に取って敵を出し抜いたり、拡張現実(AR)アクションやブロックチェーンを駆使した解決方法といった現代的〈少々SF的〉な設定と展開で割と新鮮な刺激が得られる。

次々と仲間が惨殺され夢で終わることが繰り返されるアンナの感じる不快さ、もどかしさ、気味の悪さを前半で追体験。ちょっと変わった自由人に不安や憂鬱を載せる広瀬すずの細かい演技表現によって状況に説得力が与えられる。

アンナの持つデータを狙う「窓」(佐藤浩市)や実行犯の背後に黒幕が控えているという点は迫真性が今ひとつで、回収されない伏線やぶつ切りにされた要素はタイムリープだとしても消化不良。

そもそも敵の「窓」がなぜ「螺旋」をわざわざ示すのか。行動原理が謎でそこはどうもすっきりしなかった。あれ、「トマト」なんだっけ?

それから終盤手前のシリアスな流れで『あぶない刑事』パロディは悪手。元ネタの「悲壮感の否定」をそこで出してどうする。ネタ自体が押しつぶされて死んじゃっている。

敵の一人として出てくる伊澤彩織が『ベイビーわるきゅーれ』と打って変わって前髪アップにしているものだから眼光鋭さが際立っていて“刺客感”がすごい。加藤諒立ち回って大丈夫か、本気で殺されちゃうぞ。

橋本環奈が演じる朋美はピンポイント登場。病気が進んで頭や胴体が動かせず、指だけで操作して動かす車椅子生活。アンナとの会話で悪態ついてみせる敗軍の将を自然に演じている。警察病院なのに髪色変わっちゃってビジュアル繋がっていないのが少し残念だけど。

レトロやオーソドックスにも振れたテレビ版を離れ、流行りもの〈もとい新しめの要素〉を貪欲に取り込み、ベタさを回避しようとした意欲は評価できる。その分、“ネメシスっぽさ”(=入江悠っぽさ)が薄まっちゃっている感もあるけど。銀幕でやる自信がなかったのかなあ。
夜ノ砂

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