MASH

殺しの分け前/ポイント・ブランクのMASHのレビュー・感想・評価

4.0
リー・マーヴィン主演のハードボイルド・アクション。自分のものになるはずだった9万3千ドルを追い求め、ある組織の幹部を追い詰めていく。普通ならそこに隠された陰謀やらを中心に据えそうなとこだが、この映画はストーリーは半分どうでもいいものとして扱っている。では、この映画の見るべき点はどこなのか?

この映画の注目すべき点は60sならではのアバンギャルドな作風だろう。開始早々フラッシュバックを随所に散りばめられていて、それが同じ場面だとしてもスローモーションや別の角度から何度も挟み込まれる。更には数十秒の間に現在と過去が何度も入れ替わったり、映像だけでなく音も過去と現在で重ね合わせるなど、最後ら辺ではどこか現実でないような雰囲気すら漂い始める。こう見るとあっけないラストも妙に色々と勘ぐりたくなる。

大半は007シリーズを意識したようなセットやアクションなのだが、その中でも印象的なのがクラブでのアクションシーン。ソウルフルな音楽をバックに、映写機に映される女性のサイケデリックな写真、そのスクリーンの裏で敵をボコボコにするリー・マーヴィン。最後には曲中のシャウトと現場を見た女性の悲鳴が重なり合う。そういうシーンの一つ一つが強い印象を残すのだ。

結局なぜ主人公はそんなに躍起になっているのか、肝心のそこが曖昧なままこの映画は終わる。金が必要だったのか、裏切られた復讐か、はたまた単に引き返せなくなったからか。ここで面白いのが主人公自身もそれがよく分かっていないというところだ。彼は一種の亡霊とも呼べる存在であり、金を追うこと自体がこの世に留まる理由でもあるため、それが達成されそうになるにつれ彼は生きている目的も見失っていく。最後彼はどこへ去っていたったのか。エンドロールで映されるアルカトラズ島が不思議と切ない気分にさせるだろう。
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