半兵衛

殺しの分け前/ポイント・ブランクの半兵衛のレビュー・感想・評価

4.1
悪党が自分をはめた人間に復讐を決行して目的の金を奪い返そうとする…というよくある犯罪もののプロットが過去と現在が交差するカット割やフラッシュバック、噛み合わない会話、復讐鬼のような存在とはいえ主人公が出現した途端狼狽して彼がなにもしていないのに勝手に死んでいく悪党たち、まるで居心地の悪い夢の中を彷徨っているようなリー・マーヴィンの虚ろな表情などによって実存性の不確かな作品へ。ただそんな夢幻の映像が鼻につくことがなく、ハードボイルドな作風とマッチして居心地が悪くも刺激的な作品に仕上がっているところに監督のジョン・ブアマンの並々ならぬ才気を感じさせる。

観客が全体を把握できないままひたすら何を考えているのか理解できないリー・マーヴィンに引きずられていく前半から、そんな彼の正体が様々に散らばったパーツからおぼろげながらも理解できてくる後半の流れが決まりすぎていてゾッとする。

いい女っぷりを披露するアンジー・ディッキンソンや小悪党を好演するジョン・ヴァーノンもこの異色なハードボイルドを盛り上げる。

照明やカットの組合せなどの鈴木清順風味もさることながら冒頭へと帰結していくかのようなラストは大和屋竺のテイストも。
半兵衛

半兵衛