ノラネコの呑んで観るシネマ

神回のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

神回(2023年製作の映画)
4.1
青木柚演じる高校生が、5分間のタイムループに閉じ込められる。
「リバー、流れないでよ」は2分だったが、最近短いタイムループが流行ってるの?
教室にはクラスメイトの坂ノ上茜もいるが、彼女にはループしている意識はない。
序盤は主人公が自分の時間だけがループしてることに気付き、何とか脱出しようと四苦八苦。
基本的に主役の男女の掛け合いで展開するが、ジュブナイルっぽいパッケージの割に、だんだん心が壊れて何度も自殺を繰り返したり、闇堕ちしかけたり、結構ダークに話が進む。
ところが後半ループの秘密が明かされると、ガラッと世界観が変わる。
私はこの設定、故・竹内結子主演、佐藤嗣麻子監督の「世にも奇妙な物語」の名作エピソード「箱」を思い出したのだが、こちらはホラーではなく初恋に生きた男の切なくて美しく残酷な物語。
数あるタイムループものの中でも、アプローチが相当に異色なのは間違いなく、これでもう一捻りあれば、中村貴一朗監督は長編デビュー作にして大傑作をモノにしていたかも知れない。
低予算なのもあると思うが、若干の荒さと単調さを感じさせてしまうのが残念。
とは言え観客の青春の痛みを揺さぶり、十分にエモい佳作。
次回作に大いに期待したい。