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シュヴァリエのumisodachiのレビュー・感想・評価

シュヴァリエ(2022年製作の映画)
3.8


18世紀フランスに実在した作曲家ジョゼフ・ブローニュ・シュヴァリエ・ド・サン=ジョルジュを題材にした作品。日本では配信スルー。

アフリカ人奴隷とフランス人農園主の間に生まれたジョゼフは、類まれなるバイオリン演奏の才能を見込まれて名門学校に入学。その出自で蔑まれながらも、音楽やフェンシングなど様々な面で優秀な成績を修め、ついにはシュヴァリエの称号を与えられるに至る。時代の寵児となったジョゼフはパリ・オベラ座のトップの音楽監督の座を求めるが……。

ケルヴィン・ハリソン・Jrってこういう役ばっかりじゃない?「こういう役」とは、圧倒的な優秀さで白人社会を勝ち抜きつつ、”強者黒人”としてしか認められない社会そのものへの疑問が拭えずに苦悩する役。つまりは『ルース・エドガー』とほぼ同じなので、驚嘆すべきストーリーなのに既視感があった。

いや、重要なテーマなんだけどね。マリー・アントワネットが栄華を極めた時期から、革命が盛り上がる時期までを描いた背景も面白いし、美術や音楽もなかなか良い。ケルヴィン・ハリソン・Jrは目で芝居をするので、たっぷりと間をとった仕草や表情やセリフ回しがゴージャスで見ごたえもある。でも、起伏があるストーリーのはずなのに単調に見えてしまうのはなぜなのだろう?

アフリカ文化部分に関する見せ方も中途半端というか。母親の「私たちには選択肢がない。でも選択するしかない」という言葉は重く、そこから続くシークエンスが光っていただけに、もうちょっとその辺を丁寧に描いてほしかったかな。そこから革命に参加するまでに至るジョゼフの心理面にも時間を割いてほしかったし、何なら彼が作ったオペラのシーンももっと見たかった。見どころが多すぎてちょっと散漫になっちゃったっていうことなのかな。




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