ジョー

シュヴァリエのジョーのレビュー・感想・評価

シュヴァリエ(2022年製作の映画)
3.5
音楽の才能に恵まれ、詩やフェンシングの才能もあったジョゼフ・ブローニュ。最初は貴族的で豊かな生活をまさに白人貴族のように享受していたが生き別れの母との再会から黒人としてのアイデンティティを芽生えさせ、フランス人としての王政の批判に挑む。混血児として白人社会で生きねばならなかった彼の生き方に自由と平等が芽生えてゆく。

世界中に植民地を持っていたのなら混血の子がいてもおかしくはない。珍しいのが、主人公ジョゼフが芸術教育を学び豊かな生活ができていることだ。フィクションの歴史劇だから鵜呑みにはできないが実在した作曲家である。都合よく称号を与えても、名誉や役職には混血児/黒人だから拒絶されるばかりで文明人といっても底が知れてるなあ!?
モーツァルトやグルックが実際のところジョゼフを差別していたかは不明で、モーツァルトとは同居していた時期もあるらしい。歴史を扱うと誰を悪人にさせるか難しいね。当時パリに黒人や混血がどれだけいたんだろう。下町のような場所で黒人たちが歌って踊るほど自由があったのか、社交場の裏で黒人の娼婦がいたのか、それが歴史として実在したか気になる。ロック・ユーやブリジャートンくらい振り切れてるとそんなもんかと思って見られるが、今作はそういう作りじゃない。でもいなかったと言い切れるほど知らないしな。

侯爵夫人とのロマンスが退屈で、作曲家としてのジョゼフの働きがいまいち盛り上がらず、フランス革命間近のきな臭い時勢でありながらジョゼフ自身が終盤まで無関心だからひりつく緊張感が乏しい。批評家でもないので言いづらいが、特に侯爵夫人役だが全体的に18世紀の衣装を着ただけの現代劇っぽく見えた。何を話していても身振り手振り全部現代に見える。侯爵夫人の人あまり似合わないんじゃないかな…。ポップな歴史映画マリー・アントワネットのキルスティン・ダンストはそんな印象持たなかったのに。さらに違和感を加速させるたまにフランス語が混じり基本は英語で、どっちにしたいんだよ。
退屈なロマンスよりマリー・アントワネットとの友情と破綻がおもしろかったので、親友の尺と共にむしろそっちを描いてほしかった。
ジョー

ジョー