ヒノモト

あなたの微笑みのヒノモトのレビュー・感想・評価

あなたの微笑み(2022年製作の映画)
3.8
『COME & GOカム・アンド・ゴー』のリム・カーワイ監督の最新作。
主演は、映画監督であり俳優も務める渡辺紘文さんが、実名そのままに売れない映画監督役を演じる作品。

大変、映画愛と映画館、特にミニシアター愛が映画全体にあふれた作品でした。

物語は、新作映画が作れずにくすぶっている映画監督の渡辺紘文の元に、旧知のプロデューサーから、沖縄での映画撮影の依頼が入る。早速沖縄に向かうとスポンサーとなる社長にその社長本人を主人公に映画を撮るように言われるが、イメージが湧かずに期限を守れず追い出されてしまう。現場から離れた渡辺は、小さな映画館に向かい、自身の映画を上映してくれるように頼むというお話。

ドキュメンタリー映画ではないのですが、実名そのままの役を演じる渡辺監督が、映画館を巡るロードムービーの要素と、その土地土地で出会う平山ひかるさん演じる理想のヒロイン的存在のミューズとの運命を通じて、地方都市における実在するミニシアターの現状と自主映画監督という存在そのものを映画を通して認知していく映画文化の難しさが同時に描かれていて、後に貴重な映像となる撮影そのものの尊さと、脚本が存在しないスタイルで場所に即した物語の静かな響きが美しい作品でした。

しかし、こういう思いや映画内に描かれていることは、渡辺紘文監督がどういう作品を制作しているかとか、カメオ出演としてさりげなく登場する映画関係者などの存在を知っているかどうかによって、バイアスがかかった見え方ができる人と、そうでない人とでは、大きく今作の感じ方が変わってしまうかもしれないです。

なので、人によってはこの物語を薄味に感じるかもしれないですが、現実とフィクションの間のような感覚で映画が進行していき、ロードムービーのように転々と舞台を移していくのは叙情的で、監督の本人像を知らない方でも、このリアルと虚構の味わいの面白みを感じることはできると思います。

映画内でも語られているように、簡単に映画館で上映できるものでもないし、だからといって、ネット配信だけになってしまうのも味気ないし、映画館で観る実体験の強さや、作品をセレクトされる映画館のカラーもあり、作り手も受け手も、映画館という文化を存続させる何かをつかめる映画体験になると思います。

上映後の舞台挨拶も撮影の裏側が聞けて楽しかったです。

本編ショットと舞台挨拶の写真はブログにて
https://ameblo.jp/hinomoto-hertz/entry-12774343082.html
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