あき

ヒトラーのための虐殺会議のあきのレビュー・感想・評価

ヒトラーのための虐殺会議(2022年製作の映画)
3.5
いわゆる“議論“が展開されて結論を得ているとは言え、ひとりの人間どころか民族ごと虐殺することに疑問を挟まずそれを前提として“手段“を淡々と議論していることが恐ろしい。
でも、この当時のユダヤ人排除と、現代に起きている難民流入に対する各国の拒絶的対応と自国民ファーストの思想と、どこが違うのだろうか。
当時のナチ党及びその総統を否定している現在でさえ、一歩間違えば同じことが粛々と行われる可能性を秘めている。
“悪人がはこびるのは、善人が何もしないからだ“とロシアの政治活動家ナワリヌイは言ったが、誰がどう見ても受け入れられない思想や行動は、それが顕在化した途端、善は息をひそめて姿をくらまし、悪をはこびらせる。
未来を悲観することをするものではないけど、他国への侵攻が目の前で現実になされ、また一方では独立を許さないことに武力を行使することは厭わないとまで発言する最高権力者が平然と今まさに存在する現在、そしてそれに対抗しうる“善“であるはずの民主主義は有効な手を打てずに事態を解決できずにいる。
歴史は、確実に繰り返す。
無音で流れるエンドロールは、虐殺されたユダヤ人への黙祷を表しているようで、最後まで気が引き締まる映画だった。
あき

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