むらむら

ヒトラーのための虐殺会議のむらむらのレビュー・感想・評価

ヒトラーのための虐殺会議(2022年製作の映画)
5.0
ユダヤ人ら数百万人を収容所に送り、多くを虐殺する結果を招いた、ドイツ政府高官たちによる90分の会議「ヴァンゼー会議」の模様を追ったドラマ作品。

この作品、もともとドイツでTVドラマとして制作されたという。なのにじっくり、会議自体に省略をほとんど入れず、会議をじっくり見せるという手法を取っている。

これが日本のドラマだったら、会議中にナチスと半沢直樹が殴り合って、徳川家康が止めに入る、みたいな安っぽい展開を入れてくるところだろう。

確かに、NHKの国会中継を観ている気分で、若干眠気を誘う部分もある。だが、内容的にはとても興味深い。こういった淡々とした会議で、まるでモノを扱うように、史上最悪ともいえる虐殺が決まっていくことが恐ろしい。

スマホのない時代なので、会議中にツムツムで遊ぶようなアホはおらず、皆、自分の立場を交えながら、真剣な議論を繰り広げる。特に、冷徹なナチスの親衛隊中佐として、反対派を論理的に(ってか論理なんか通ってないのだが)やり込めるアイヒマンの姿は印象的。この作品では描かれていないが、アイヒマンはこの後、ゲシュタポのユダヤ人移送局長官として活躍し、戦後はアルゼンチンに潜伏。1960年になってようやくモサドによってイスラエルへと連行され、処刑されることとなった。

多少人道的な部分を見せるポーランド総督府次官や内務省次官も、最終的にはナチスに押し切られる形で虐殺に同意する。逡巡する、もしくは法の精神に則って抵抗する彼らにもう少し勇気があったら、歴史は変わっていたのだろうか……と想像する。

この会議を追体験できただけでも★5の作品だった。

ただ、ランチの休憩が10分くらいしかなかったのはいくらなんでも短かすぎじゃないか。トイレ並んだら終わりそうな気がするんですけど。これも史実に忠実なのか気になった。

この作品とは関係ないが、ヒトラー関連の作品は数多い。filmarksで作品数を検索すると「ヒトラー」で95作。「ヒットラー」だと256作がヒットする。“ヒット”ラーだけに。

もちろん中には「ヒット&ラン」とか「FIRST OPTION 飛虎」とか、明らかに関係なさそうな作品とか、「白竜 ヒットラーの息子」のように、お前ヒットラー言いたいだけやんけ、って作品もあるが、フリー素材かと錯覚してしまうほど、ヒトラーを題材にした作品が多いのも確かだ。

中でも、ヒトラー暗殺や最期に関しての作品は多く、タイトルだけでも

「ヒトラー最期の日」
「ヒトラーと戦った22日間」
「ヒットラーを狙え!/独裁者 運命の7分間」
「ヒトラー暗殺、13分の誤算」
「ヒトラーを殺す42の方法」
「ヒトラー 〜最期の12日間〜」
「アドルフ・ヒトラー/最後の10日間」

など多い。10日間と最後の12日間の違いは何なのかよく分からないし、「ヒトラーを殺す42の方法」は「80日間世界一周」みたいでちょっと面白そうではあるが、今日はもうお腹いっぱいなので、また日を改めて観てみようと思う。

しかし、ヒトラーヒトラー書いてたら、何故かトナラーのことを思い出し

(「ワイルドロード」の感想 https://filmarks.com/movies/105849/reviews/145654987 参照)、

「ヒトラーがトナラーだったらイヤだー」

と頭が混乱してきたので、やっぱりもう寝ることにする。

(おしまい)
むらむら

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