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ヒトラーのための虐殺会議のYのレビュー・感想・評価

ヒトラーのための虐殺会議(2022年製作の映画)
5.0
言葉の誤解を恐れずに、変なことを言いますが〝良い会議〟だった。

会議の前、要人たちがわらわら集まるところから始まり、会議前半、休憩を挟んで、会議後半、そしてリラックスモードのしごおわタイムまで。実際のヴァンゼー会議の所要時間も90分だったとのことで、時間軸も再現されているよう。
ちゃんと議論して、反対意見も沈黙させられることなくしっかり吟味され、次々に重要な意思決定がなされて行く。専門的な意見は専門家に聞く。議論が煮詰まれば、休憩してガス抜き。事前に根回しをしてスムーズに進めたり、必要に応じて即座に分科会を実施。
こんな議題でなければ、会議のお手本になるくらいハイクオリティなものだった。優秀な人達だったのでしょう。

さてさて、この会議で何が決められているのか。歴史を知る人は誰もがわかる、議題としては人類史上最低なこの会議。
私はストレスを感じる時に蕁麻疹が出るのですが、この映画を観て会議に参加してる気分になって、終始蕁麻疹出まくり…
観終わったあとひと仕事終えたような、皮肉にも達成感を感じます。これもこの映画のすごいところ。不思議な感覚。

人道に対する議論までされていたことは少々驚きだった。出席者の面々も色んなパワーバランスとそれぞれの役務を全うしていて、個性があって、いるいるこういう人、みたいに思える人間味も感じられたのが不思議な感覚だった。悪魔だと思っていたから。

ヴァンゼー会議の議事録がベースになっていること、全てがドイツ語で再現されていること、俳優陣の些細な表情の変化や言動もリアルでよかった。
この作品から学べること。
彼らは悪魔だったのだろうか、馬鹿だったのだろうか。たぶん違う。
世界中が同じことを決して繰り返さないために、考えなくてはいけないことをアイロニックに問うてくる映画。

全然関係ないのですが、ドイツでは結婚指輪を右手にするのだということに気づきました。
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