あんじょーら

ヒトラーのための虐殺会議のあんじょーらのレビュー・感想・評価

ヒトラーのための虐殺会議(2022年製作の映画)
3.0
マッティ・ゲショネック監督   クロックワークス   U-NEXT


これも今年(2023年)劇場に観に行きたかったけど、間に合わなかった作品。でも早くもU-NEXTさんで観られるの嬉しいです。

とても有名なヴァンゼー会議の映画化です。

ヒトラー関係でどうしても思い出されるのが、10年くらい前でしょうか、小さな飲み屋で私は1名、近くに若いカップルが座っていて、なんだか文化的な話しや宗教の話しをしていたところ、カップルの若い男性が私に「ホロコーストってでっちあげだったみたいですね」という趣旨の発言をされて、私はすぐに返事が出来ず、やんわりと、どうなんでしょうね?という曖昧な態度を取った事を思い出し、恥じています・・・でも、お酒の入った席で、あまり政治や宗教、プロ野球の話しはしない方が良い、とは伺っていましたが、本当にその通りだと思います。でも、あの時言葉を濁して曖昧な態度を取った事が、こういう作品を観るたびに思い出され、非常にイヤな汗をかきますね・・・仕方ないのですけれど。


ユダヤ人最終的解決を各省庁や軍人が会議を開いて取り決めるまでの室内モノの映画です。映画ですから演出されています。


しかし、恐らく、議事録に乗っ取った発言であろう事は充分伝わってきました。ちゃんと残ってるのが凄い。


こういう、自分が所属する組織、権力者の負の側面を描く映画が作られる国は信用できる気がします。うちの国の場合もあるんでしょうけれど、それでも、良くて岡本喜八監督の「日本のいちばん長い日」くらいな感じがしますし、正直、加害者として描かれているか?と言われると、凄く微妙に隠されている感じもします。それに責任を取る人が自死されてしまうのも、理解はできるけれど、生きて嫌な目に会う事の方がツライ気がするのです・・・


これは、間違った、と今なら言える、優性思想と民族浄化という恐ろしい事が重なってしまったその過程が描かれていますし、そこにはヒトラーさえ居なくて、恐ろしい事に、全員が、善意で、優性思想と民族虐殺に加担してるわけです。

もちろん、省内とか、軍部の中の方面軍みたいな中での、権力争い、跨った権利の取り合いな訳ですが、根底に流れているのは、善意。それも総統に対しての忠誠でもあります。


つまり、回りくどくなく言うと、殺してもイイ人間だから、効率よく、殺す手段について、その権利も含めて大人が善意で、殺害方法や移動手段やコストについて考えている所を描いた作品です。

いつも思いますが、完全に自分の側に正義が存在する、と考えた人間が、最も残酷になれます。正義は重要ですけれど、相対的なモノな気がします、時代でも立場でも、変わりゆく概念です。でも、何かを信じていたい、という気持ちは分かりますけれど。


こういう作品は届いて欲しい人にはあまり届かずに、同じような考えを持っている人の考えの補強になるだけな気がしますけれど、いちいち補強していきたい気持ちはあります。