カタパルトスープレックス

ヒトラーのための虐殺会議のカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

ヒトラーのための虐殺会議(2022年製作の映画)
3.5
ユダヤ人問題の最終的解決、別名「ホロコースト」について国家保安部が指揮することが決められた会議を描いた(ほぼ)密室劇です。

まず、会議がすっごくドイツ人っぽいと思いました。以前にドイツ企業と関わることがあって、いろんな打ち合わせに出ました。雰囲気的にそっくり。他部署との調整を重視し、言葉の使い方にとても厳密で、権威主義的。いい悪いではなく、ドイツ人とのビジネスってそんな感じでした。実際にこのような会議だったかは分かりませんが、すごく説得力がある。

会議で机をコツコツ叩いて賛成の意を示すのはアメリカ企業でもよくあるのですが、当時のドイツでもやってたんですね。そこも「へー」と思ったポイントでした。映画とは全く関係ないですが。

本作はいかにもドイツ人らしい議論の進め方で描かれましたが、日本だとどうなんだろう?と思いました。ドイツ人は反論があっても頭から抑えつけない。会議中に怒号が飛び交ったり、威圧的な態度で抑えつけようとしたりしない。日本の映画だと「貴様、非国民か!恥を知れ!」とか怒鳴りそう。日本人がそうかどうかは別として、日本映画での描き方の問題。

多少の反対意見は出つつも結果としてはまとまってしまうのが戦時で思考がおかしくなっている怖さだし、その象徴としての国家保安部長官ラインハルト・ハイドリヒなんだと思います。そして実務を担うアドルフ・アイヒマン。ホロコーストはヒトラーが一人で起こしたわけではなく、このようなナチスという軍事官僚マシンが起こしたことだとわかります。

このような日本映画を観たいけど、無理だろうなあ。日本の戦争映画って基本的には「日本人は可哀想な被害者」だと描かないといけないから。