なんと恐ろしい作品。
でも、真に恐ろしいのは事務的にジェノサイドを計画している高官たちではない。
本当の恐怖は「真実とは」という所だ。
勿論会議の内容も現代から見ると常軌を逸しているのだが、秘書を含め16人のユダヤ人への憎しみに満ちた発言内容に疑問を持ってしまった。
「ヒトラーが個人的にユダヤ人に憎しみを持っていて、それの報復としての政策」という説明を鵜呑みにしていた自分に対する恐怖の方が大きかった。
彼らの発言を聞く限り、ユダヤ人とドイツ人の間にあった「憎しみ」が如実に表れている。
いったい、どれだけ酷いことをしたらここまで憎まれるのだろう?
そして、私は今までこのユダヤ人虐殺に関する書物や映画で、ユダヤ人を悪く描いたものを見たことが無いし、国民感情がそこまで行った原因を描いたものも観たことが無い。
1100万人の虐殺など許されるわけはないのだが、そうなった過程は本当に正しく後世に伝わっているのだろうか?
そして、現在の戦争や抗争の原因や過程は、はたして世界に正しく伝わっているのだろうか?
そう考えると「真実」というものがいかに不確実な物か、そして見えないものかという不安が襲いかかってくる。
その時代の倫理、常識に操られた人々が怖いのではない。不確かな情報から真実を探し出せないことが怖いのだ。
そして、最悪なのがその情報を「真実」と信じ込んでしまう自分なのだろう。
映画で描かれる高官たちの言動を「恐ろしい」と感じているだけでは、もったいない作品。
余談。
大前提として、脚色は最小限で、議事録を正確に映画化したということがある。
でも、議事録では残るはずのない密室での会話なども入れてある所を見ると、ちょっと怪しい所もある。
でも、会議中の会話はそのままと思えるので、このような感想となった。
あ、今作は元はテレビ用に作られたTVMだそうだ。
質の高さに驚かされる。