おなべ

正欲のおなべのレビュー・感想・評価

正欲(2023年製作の映画)
3.8
◉本作の感想を一文に集約するとしたら…もうホントに「うっせぇッ‼︎ うっせぇッ‼︎ うっせぇわッ‼︎‼︎」です。この言葉に集約されます。

◉生きづらいね。「多様性」に括られる側も括られない側も、今の時代は本当に生きづらい。“ハラスメント”・“フェティシズム”・“マイノリティ”・イデオロギー、そして「多様性」…気にしないといけない事が多すぎてゲシュタルト崩壊しかねない。だからと言って、全てを「多様性」に括って何でもOKという訳ではなく、「人に迷惑をかけない」「人の嫌がることはしない」は大前提であり、小学校で習う基本中の基本で……あ、今では小学校に行ってない子もいるのか…危ない危ない、アップデートし忘れるところだった。

◉まるで社会から「やい!時代遅れの大人たち、アップデートしろ!」って言われてるような気もして、それも「うっさい」と感じるのも分からなくはない。新しい時代の波や価値観が到来したからと言って、新しいスマートフォンの機種みたいにデータを移してOSを自動アップデートできれば良いんだけど、今まで生活と体に染みついた経験や感覚はそう簡単には変えられないし、理解できないものを理解するには気力も体力もいる。だから一概に「時代遅れ」と言ってはいけないんだけど、それでもアップデートしないと生きづらい社会・世の中に変わっていってるから、嫌でもアップデートしないといけない。じゃないと、あっという間に「時代遅れ」と指を刺され、「老害」扱いされる。そのうち、「生き物にも多様性を!」と叫ぶ左派の環境保護団体が現れる日もそう遠くないかもしれない。
※排外主義は論外です…。

◉余談で、最近はLGBTQでさえも少し古い価値観に変わりつつある。知らない人は「SOGI」で検索⭐︎!(SOGIとは、Sexual Orientation and Gender Identityの略で「性的指向と性自認」を意味する。)
参考サイト: https://www.asahi.com/sdgs/article/14813603

◉昔は「変な人」「変わった人」「異常な人」「頭おかしい人」で終わっていたのが、最近は人の嗜好や気質の分析が進歩して、明確に細分化されたデータとして色んなタイプの人がいる事を知ったり、アクセスできるようになった。当事者としては理解されなかったものが理解されるようになって嬉しい反面、価値観や多様性の押し付けは、人によっては「上から理解者気取り」と見なされ、本作のように「頼んでませんけど…」になり得る。

◉この線引きが本当に難しくて、特殊な嗜好や気質を知られたくない人がいるのもまた事実。たとえば、ゲイの人に「あなたはゲイですか?」と聞いて「はい」と正直に答える人は少ないと思うし、ズレた人に「この人はゲイですが、皆さんゲイに対する偏見をやめましょう!」と声高々に暴露された日には、余計なお世話を通り越して殺意さえ芽生える可能性も。まだまだマイノリティに厳しいこの社会で「私はマイノリティです」と言うメリットが見当たらないのが現実。普通の人も、普通じゃない人も、両方とも生きづらい。

◉ただ、1人でも理解者がいる事は、本当に心の支えになる。これが本作のパンチラインかと。

◉長々と長文で書き綴ったけれども、結局何が言いたいのかというと、理解は知る事から始まるということ。「大抵の不安や恐怖は自分の無知からくるものである」と、どこかの偉人が言っていたけど、全ての物事には理由があり、ただ自分が知らないだけで、理解は知ることから始まる。もちろん、上述したように気力も体力も使うのだけど、何も知らないのに、むやみやたらに否定するのではなくて、たとえ理解できなくても知ろうと(理解しようと)する事はできる。その後に理解できなかったとしても、「人は人」「そういう人ね」「社会には自分の知らない性癖や気質の人がいるのね」で良くて、自分にとって嫌な人だったら距離をとればいい(←めんどくさいけどね!)。

◉最後に、とある兵士の核心をついたセリフを転載。

「わからないものはわからないと蓋をして、この先どうやったら俺たちは巨人に勝てるんですか。俺たちが巨人を計り知れるようになるのはいつですか?」
      ──ジャン・キルシュタイン。


※40本以上レビューを滞納中、取り急ぎレビュー。
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