テトラ

正欲のテトラのネタバレレビュー・内容・結末

正欲(2023年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

面白かった。
冒頭、TVで性的マイノリティーやLGBTQといった最近話題の多様性が取り上げられている中、より少数派に対してはスポットライトが当てられず孤独な思いをしている人がいた。
どうして、私の欲は正しくないと後ろ指をさされてしまうのかーー

まずタイトルだが、何故「欲」ではなく「正欲」としたのか。
本作における「誤った欲」とは法律を犯す欲である。これは、作中で唯一「児童性愛者」のみ擁護されなかったことから分かる(学校に行きたくない欲や水への性欲には理解者がいた)。
そのため、ここで言う正欲とは「法律で触れていない欲望」すなわち「今までは倫理的や道徳的という言葉で表していた曖昧な欲望」を指している。
この映画の面白いところは、「世間は多様性と言うが、本当に少数派の人間の多様性は認めてくれない」と嘆く人間が児童性愛者を否定するところである。
自分達は学校の蛇口は壊すし、公共施設の水(たぶん飲料用、手洗用)は大量に使うわで一部の人に迷惑をかける一方、私達は児童性愛者のように子供に迷惑をかける人なんかじゃない、と強く否定するものだから、人間の視野の狭さが垣間見える。
そのため視聴者は、何を以て多様性と言うのか、つまり「多様性の定義」というものがいかに曖昧なものなのかを考えることになる。
となると、大多数の人間は多様性を認めているつもりになっていても、実際は「こんなイケメンと美女が困っているのか…」と同情しているだけなのでは?と思ってしまう。

と色々考えていたが、いかんせん水フェチなんて容易に想像できるものだから意外性が無い。水なんて綺麗だから興奮してる人がいても「そうですか」で終わっちゃう。メガネの鼻当てとか不法投棄されている粗大ゴミとか「それは確かに誰からも認められなさそう」と思われるようなもを性欲の対象にしてほしかった。
それを踏まえて内容を思い返せば、飲み会で困らない最高のネタ(水フェチ)持ってるけどコミュ障のせいで孤立している奴らが噴水オフ会してみたら冤罪かけられたという、ただのオタクコミュニティの話である。

が、コミュ障とは言うものの、それは大人だから言える事。子供のうちから否定され続ければ「自分っておかしいのかな?」と思い、引っ込み思案になるもの。もし自分が親となった時、重要なことは子供の欲望を受け入れると同時に世間ではどう反応されるかを教えることだと思う。
世の中は建前だらけなので、自分の欲望は誰かに認められる一方、日常的には健全を演じることが“普通“なのである。
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